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2016.01.27

保証債務の履行による譲渡の資金使途

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「保証債務の履行による譲渡の資金使途」です。

景気が上向いてきているとはいえ、破産や倒産は常にあるのが世の中です。

そうなった場合、代表者保証等を履行するため、不動産を譲渡することがありますが、この場合の資金使途が問題になった事例があります。

具体的には平成25年4月4日の裁決ですが、前提条件の前に該当条文を確認してみましょう(所法64②)。

保証債務を履行するため資産(第三十三条第二項第一号(譲渡所得に含まれ

ない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第一項に規定する

政令で定める行為を含む。)があつた場合において、その履行に伴う求償権

の全部又は一部を行使することができないこととなつたときは、その行使す

ることができないこととなつた金額(不動産所得の金額、事業所得の金額

又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)を前項に

規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定

を適用する。

※前項では「その回収することができないこととなつた金額又は返還すべき

こととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、

なかつたものとみなす」と規定されています。

では、この事例の前提条件です。

〇 債務者は不動産賃貸、管理等を行う同族会社で、被相続人は

  敷金返還債務の物上保証人、連帯保証人であった

〇 被相続人は保証債務の履行のために不動産を譲渡

〇 原処分庁の主張は下記

・ 相続税の納税資金を捻出するための譲渡である

・ 譲渡時に連帯保証債務を返還するのに十分な資金を保有していた

・ 保証債務の履行による譲渡の特例は認められない

この状況の中、国税不服審判所は下記と判断しました(全部取消し)。

〇 法令解釈

所得税法第64条第2項の趣旨は、保証人が、将来保証債務の履行をする

こととなったとしても、主債務者に対する求償権の行使により最終的な

経済的負担は免れ得るとの予期の下に保証契約を締結したにもかかわらず、

一方では、保証債務の履行を余儀なくされたために資産を譲渡し、他方では、

求償権行使の相手方の無資力その他の理由により、予期に反して求償権を

行使することができなくなった場合に、その資産の譲渡者は、実質的にみて

その譲渡による所得を享受しているとはいえないため、資産の譲渡代金が

回収不能となったときと同様、求償不能となった金額は所得計算上存在して

いなかったものとみなして課税上の救済を図り、その資産の譲渡に係る所得

に対する課税を求償権が行使できなくなった限度で差し控えるべきとした

ものと解される。
         

上記の趣旨に照らせば、資産の譲渡について保証債務の特例を適用するため

には、

①債権者に対して債務者の債務の保証をしたこと

②上記①の保証債務の履行のための資産の譲渡であること

③上記①の保証債務を履行したこと

④上記③の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなく

 なったこと

の4つの実体的要件が必要であると解される。

〇 原処分庁の主張について

・ 相続税の納税資金を捻出するための譲渡であるという点について

上記②は資産の譲渡による収入が保証債務の履行に充てられたというけん連

関係を要求するものであり、資産の譲渡による収入の一部が他の用途に

充てられたといった事情が存したとしても、そのことをもって直ちに上記

実体的要件の②を欠くこととなるものではない。
         

・譲渡時点の資金状況について

保証債務の特例が設けられた趣旨に照らすと、その適用の要件は上記の

とおりと解され、譲渡者の資産の保有状況が要件であるとは解されない。

・原処分庁のいずれの主張も理由がない。

いかがでしょうか?

所得税法第64条第2項をどこを読んでも

〇 譲渡代金の一部が他の使途に使われたら、適用不可

〇 保証債務を履行するために他の資金で賄える状況なら適用不可

とは書いてありません。

あくまでもこの規定が前提にしているのは

〇 保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合

〇 その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなった

という状況なのです。

文理解釈からすれば、当然の裁決ですが、きちんと条文を読んでいないと、

見落としがちな盲点になりますので、覚えておいてください。

 

 

※ブログの内容等に関する質問は
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※2014年5月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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