修正申告した方が税額が減る!?
※2015年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
早いものでもう11月。税務調査も
収束に向かっている事案の方が多いことでしょう。
さて、この時期には、調査官から修正申告と更正の2択を
提示されることがよくあります。
修正申告をすれば納税者有利で終わるにもかかわらず、
更正となるとなぜか不利な取扱いを突きつけられたケース、
つい先日あった、実際の質問を紹介しましょう。
「7年間で4,000万円の売上を除外しており、
重加算税が課されることは了承しています。調査官から
修正申告であれば、社長からの借入金が7年間で増加した分を、
貸付金として処理し、残額を役員賞与として対応する。
ただし更正となると、4,000万円全額を役員賞与として、
さらに青色の取消をする、と言われました。修正申告と
更正でこれほど内容が異なることはあるのでしょうか?」
法的に考えると、修正申告と更正で、取扱いに
相違があること自体があり得ないです。
修正申告と更正の法的な相違については、
私がタビスランドで書いているコラムをお読みください。
「修正申告と更正の違い(1)」
https://www.tabisland.ne.jp/inquiry/column/column_19.htm
「修正申告と更正の違い(2)」
https://www.tabisland.ne.jp/inquiry/column/column_20.htm
上記紹介した調査事案はニュアンスがちょっと違いますが、
調査官が修正申告で終わらせたいあまり、
「修正申告の(勧奨ではなく)強要」をしてくるのであれば、
これは看過できない調査と言わざるを得ないでしょう。
結局のところ、上記のように調査の現場で調査官から、
「修正申告=有利」「更正=不利」な条件を言うことから
明確にわかる通り、調査官は税務調査の結末を
修正申告で終わらせようとしていることが明白です。
調査官が更正(処分)したくなく、修正申告で
終わらせたいのは下記3つの理由が存在します。
①税務署内の手続きが面倒
修正申告を勧奨すれば、基本的に担当統括官の決裁だけで
税務署内の手続きは終了します。しかし更正ということになると、
手続き決裁が面倒で、時間も労力も要します。
②附記すべき理由が曖昧
税務調査において調査官が否認指摘をしたものの、
その根拠が非常に曖昧であることが多くあります。
税務調査の結末が修正申告の提出ということであれば、
その根拠がいくら曖昧でも、「納税者が納得して提出するもの」
である以上、問題にはなりませんが、更正となると、
否認根拠を法令で明確にしなければなりませんから、
附記すべき否認根拠を挙げるが面倒で難しいのです。
③不服申立てが前提となっている
更正をすると、かなり高い割合で異議申立てが行われます。
そうなると、再調査(実質審理)を行わなければなりません。
税務署からすると税務調査の二度手間になるのです。
「更正したくない」という調査官の本音を知っておけば、
納得できない調査官の提案に対して、無為に
修正申告してしまうこともなくなります。
また、税務調査の交渉上、「修正申告に応じるから、
この部分は何とかしてよ」という主張も通るのです。
修正申告と更正の相違は、法的理解はもちろん、
調査官の内情も知っておくことが重要なのです。
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