修正申告に加算税が課される・課されないの分岐点7
※2021年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週から引続き、修正申告に加算税が課されるか
どうかの分岐点を取り上げますが、今回は
調査開始後に修正申告を提出した場合であっても
加算税が課されないケースについて解説します。
なお、事前通知(調査通知)後~調査初日(臨場)前
に修正申告した場合、調査に着手していないことから、
加算税は5%となりますので、ご留意ください。
当初申告に誤り・漏れ等があることを認識していながら、
税務調査の前に修正申告を提出できない理由としては、
実際に下記のような事情があり得ます。
●従業員の不正があり、不正額を把握している途中に
税務調査が入ることになった
●事前通知後~調査前に申告内容を見直し、納税者に
確認したところ申告漏れを把握したが、資料等が
膨大で集計などが間に合わない
このような背景・事情を調査官に伝え、調査日程を
先延ばしにしようとしても、「調査の中で
確認・集計しますから」と延期を認めてくれない
ケースが多くあります。
さて、このように「当初申告の誤り・漏れを
認識しながら調査が開始された場合」の加算税を
争った裁決・判決事例は数多くありますし、
結果として納税者が勝っている(加算税が取消し)
事例も多いということは知っておくべきでしょう。
上記の「従業員不正」の事情に関しては、
平成23年5月11日の公開裁決事例があります。
この事例では、従業員の横領(給料支給額の水増し)が
あった事実を、調査の数日前に調査官に事前に
伝えていたことから、
「自発的に修正申告書を提出する決意を有しており、
その決意は事前説明において客観的に明らかになったもの
ということができる。そうすると、本件修正申告書の提出は、
調査があったことにより更正があるべきことを
予知してされた修正申告書の提出には当たらない。」
として、加算税(重加算税)が取り消されました。
同じような事例として、調査の初日に概況説明等をした後、
経理担当者の不正を調査官に説明し、これに関連する
資料を自ら提出したという下記の公開裁決事例ですが、
こちらも加算税(重加算税)が取り消されています。
このように、調査が開始された後であっても、
●調査官に誤り・申告漏れ等の事実を先に伝える
(調査官から指摘されたわけではない)
●調査前から誤りを是正する修正申告を提出する
意向があった(が間に合わなかった)
●自ら関連する資料等を提示している
(調査官が非違事項を見つけたわけではない)
などの事情があれば、「更正の予知」はなかったとして
加算税を課されないケースもあるのです。
これも事実認定によって判断が相違するところで、
かつ加算税の賦課基準として「調査着手説」
「端緒把握説」「具体額発見説」が判例上あるなど、
確定的には言い切れない論点が大きいですが、
少なくとも納税者有利の事例は知っておくべきです。
本メルマガの前週までの説明・解説では、
「調査開始後」は行政指導でないため(原則として)
加算税が課されるとしていましたが、このように
調査開始後の加算税の賦課基準は「更正の予知」の
有無となりますので、併せて理解してください。
なお、この論点についてさらに掘り下げて
理解したい方は、下記の論文をお読みください。
通則法65条5項(納税者の更正の予知)の解釈における
「自発性基準説」の提案
-東京地裁平成24年9月25日判決を題材にして-
さて、ここまで7回にわたって
「修正申告に加算税が課される・課されないの分岐点」
を解説してきましたが、来週でシリーズ最後として、
修正申告における加算税の全体をまとめます。
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