修正申告の勧奨が実質的に強要・脅しになっている場合の対応方法
※2023年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガでは、税務調査の最終段階における
「修正申告の勧奨」が【行政指導】に該当することを解説しました。
行政指導という行為は国税通則法等の税法に規定はなく、
行政手続法に規定があるわけですが、
下記規定では一般原則が明記されています。
行政手続法第32条(行政指導の一般原則)第2項
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかった
ことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
このことから税務調査において【修正申告の勧奨に従わなかったこと
=更正になることを理由として不利益な取扱いを受けない】
ことが担保されているのですが、実際の調査官の対応としては、
修正申告を提出しないと伝えると、
●さらに調査日数を要する
●反面調査が必要になる
●青色取消しや重加算税などの可能性をほのめかす
●調査対象期間が修正申告であれば3期分だが更正なら5期分
など、修正申告の勧奨に応じないことによって
納税者の労力的負担もしくは税負担が増えることを強調し、
修正申告の勧奨が実質的に強要・脅しになっているケースもあります。
このような調査官の主張に対して、適正に反論するには
上記行政手続法第32条第2項の規定を持ち出すしかない
わけですが、修正申告の勧奨があまりにヒドく、実質的な
強要・脅しが改善されない場合、「行政指導の中止等の求め」
をするという対応方法を考慮すべきでしょう。
行政手続法第36条の2(行政指導の中止等の求め)
法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる
規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該
行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、
当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、
当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを
求めることができる。(以下、略)
この手続きに関しては、国税の内規でも下記の記載があります。
「税務調査手続等に関するFAQ」 問4-34
(職員用 共通 令和4年6月 国税庁課税総括課)
修正申告等の勧奨の際に、行政手続法第36条の2に基づく
「行政指導の中止等の求め」の書面が提出されたが、
どのように対応すればよいか。
(答)
「行政指導の中止等の求め」とは、法律の要件に適合しない
行政指導を受けたと思う者が、行政指導を行った行政機関に
対して書面で違法な行政指導の中止等を求める制度であり
(行政手続法第36条の2)、調査手続においては、
修正申告等の勧奨(通則法第74の11第3項)が本制度の
対象となります。修正申告等の勧奨の際に、調査対象者から
「行政指導の中止等の求め」が書面で提出された場合は、
修正申告等の勧奨を行わず、調査担当者の担当以外の統括官等が、
「行政指導の中止等の求め」を確認の上、「調査結果の説明書」
(調査結果の説明が適切に行われたかを含む。以下、併せて
「調査結果等」といいます。)を見直します。(以下、略)
なお、「行政指導の中止等の求め」は書面で行う必要があり、
当該申出書には下記の事項を記載する必要があります
(行政手続法第36条の2第2項)。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該行政指導の内容
三 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
四 前号の条項に規定する要件
五 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
六 その他参考となる事項
確かに書面を作成すること自体は面倒ではありますが、
第三・四号は「行政手続法第32条第2項」であり、
第五号は「修正申告の勧奨に従わないことを理由として
不利益な取扱いを受けた(受けるような発言をされた)」
ということで、記載・作成するにしても難しいものではありません。
税務調査の最終局面において、修正申告の勧奨を
受け入れるかどうかはかなり機微をともなう判断が必要ですが、
実質的に強要や脅しと捉えられる場合については、
「行政指導の中止等の求め」の書面を提出することが有効です。
この手続き自体を知らない税理士・会計事務所が
ほとんどでしょうから、ぜひ参考にしてください。
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