修正申告の強要に屈しない
今回のテーマは、『修正申告の強要に屈しない』です。
2月の時期まで税務調査が長引いていると、
問題になるのは「修正申告か(増額)更正」の選択を迫られる時期です。
この時期に選択を迫られる理由は、
①個人であれば3月15日に時効を迎える年分が生じる可能性がある
②調査官も確定申告の繁忙期を迎えるので早く終わらせたい時期
の2点が挙げられるでしょう。
当然ながら、納税者が納得していないのであれば
修正申告を提出することはできませんから、
調査官には更正処分を依頼することもあるでしょう。
しかし調査官は、更正するのが面倒なので
何としても修正申告の慫慂(しょうよう)で終わらせようとします。
これは、下記のような理由からです。
①更正は税務署内の手続きが面倒
(逆にいうと、修正申告は楽)
②更正するだけの明確な根拠がない
③更正後に不服申立てをされても面倒
さてここで、絶対に勘違いしていただきたくないのは、
(増額)更正されても「不利益は何もない」という事実です。
修正申告するのと更正(処分)されるのは、
何か更正の方が損・不利益があるように思いがちですが、
そのようなことは絶対にありません。
本税も附帯税も何ら変わりません。
逆に、更正された方が不服申立てをする権利を得ることができます。
修正申告を提出しないことで何も不利益を受けないことは、
法律上も明記されていることです。
【行政手続法第32条(行政指導の一般原則)】
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に
従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
ここで注意が必要なのは2点です。
①修正申告の慫慂(しょうよう)は、行政手続法の「行政指導」にあた ります。ですから、税務調査の結果として修正申告を提出しなくても、
さらには、調査官が修正申告の提出をいくら推し進めてきても、
それに従わないことで不利益が生じることはないのです。
②来年から国税通則法の改正がありますが、現行の段階でも
税務調査においては、上記行政手続法の適用があります。
(来年以降も変わらずにこの条文の適用があります)
以上から、税務調査で調査官が
「更正されてもいいんですか?」
「修正申告しないと面倒なことになりますよ」
など、実質的に修正申告の強要を迫ってきた場合、
これは明らかに「行政手続法違反」となるのです。
納税者が納得していないのに修正申告を提出することは
絶対にしてはなりません。あとで修正申告の提出自体を
無効・錯誤で訴えるのはそうとう大変なことです。
(実際に無効・錯誤が認められるケースは稀です)
また、「この内容であれば修正申告を提出しない」と明言すれば、
調査官から譲歩してくる場合がほとんどです。
交渉としてはこちらが有利だと考えるべきなのです。
※2012年2月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
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