個人の通帳は見せなければならないか?
※2015年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
相も変わらず、税務調査において調査官より
「個人の通帳を見せてください」と要請されることに対して、
少しおかしいとは思いながら、明確な根拠をもって
反論できない方も多いようですので、本メルマガでは
ケースに分けて、この点を解説していきます。
まず、根拠条文の確認です(カッコ書きを除く)。
国税通則法第74条の2
国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、
所得税、法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、
次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、
その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、
又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。
ここでまず注意が必要なのは、【その者の事業に関する】
帳簿書類等を見せなければならないということです。
①個人事業主の場合
個人に対する調査において、例えば事業用の通帳と
生活用の通帳が明確に分かれていた場合、
生活用の通帳を見せる必要はまったくありません。
なぜなら、繰り返しになりますが、【その者の事業に関する】
通帳を見せる必要(義務)があるのであって、
生活用の通帳はここに含まれないからです。
②法人の場合
法人に対する調査において、「代表者の通帳を見せてください」
と言われた場合、これは【原則として】見せる必要はありません。
なぜなら、これも①と同じ根拠で、「法人の
事業に関する」通帳ではないからです。
ただし・・・法人と代表者で金銭のやり取りをしている場合は、
その資金の出所に関して受忍義務があるため、
代表者の通帳を見せなければならない場合もあります。
これは、法人から見た場合、金銭のやり取りをしているという
意味において、代表者個人が反面調査先となるからです。
もちろん、資金のやり取りをしている以外の
通帳(生活用など)まで見せる必要性はありません。
さて、①②共通で問題になるのは、調査官が
「個人の通帳を見なければ、事業の収入とすべき金銭が
入金されているかどうかがわからない」
と主張してくる場合でしょう。
これは「卵が先か、鶏が先か」の議論です。
この調査官の主張を覆す根拠として、
国税庁のホームページに下記の記載があります。
「税務調査手続に関するFAQ」(一般納税者向け)
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を
求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が
私物である場合には求めを断ることができますか。
【回答】
法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、
帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することが
できるものとされています。この場合に、例えば、
法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について
事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、
法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。
調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を
説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますので、
調査へのご協力をお願いします。
ここで明記されている通り、
個人預金について事業関連性が疑われる場合
⇒ 個人の通帳も見せなければならない
(質問検査権の範囲内で受忍義務がある)
のであって、事業関連性が疑われもしないのに、
個人の通帳を見せてください、は根拠がないとわかります。
※この違いは非常に重要なので注意してください
このように、個人・法人であっても、原則として
「生活費の通帳を見せてください」は質問検査権の
範囲を超えた要請になります。
調査官が個人用の通帳を要請してきた場合は、
上記の通りきちんと根拠をもって反論してください。
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