個人への税務調査が増加傾向に
今回は、『実地調査と着眼調査』がテーマです。
皆さんは、『実調率』のお話を覚えていらっしゃいますか?
以前の記事では法人企業の『実調率』についてお話しましたね。
少しおさらいをしてみましょう。
『実調率』とは「税務調査の対象件数のうち実際に税務調査した対象の割合」です。
つまり、1年間で何%の法人や個人事業主に税務調査ができたかを示す指標で、国税がマクロ的に重視している数字です。
『実調率』は国税庁のホームページでも、過去からの推移を見ることができるのですが、最近は『実調率』の低下に歯止めをかけることが国税の使命となっています。
そんな中でも、個人に対する実調率の低下は異常な数字まで来ています。
個人に対する実調率とは「実地調査(着眼調査を除く)の件数を
税額のある申告を行った納税者数で除したもの」です。
ここ数年1%にも満たない数字になっています。
つまり単純に解釈すると、税額がある申告をしても
100年に1度も税務調査がないということになります。
しかし、ここで間違って解釈してはいけない2つの要素があります。
1つ目は、税額があるといっても個人事業者でなければ
実際の税務調査の対象にはならないこと、つまり
年金所得者で税額が発生している個人も対象に含まれています。
また、逆に税務調査の対象になる個人事業主であっても、
赤字申告している者はこの数字に含まれていないという問題です。
定義がしっかりしていないため、上記の定義では
個人事業主や不動産所得者など、本来税務調査すべき対象の
『実調率』が正しく出せているわけではありません。
またもう1つの問題は、平成16事務年度から導入された
着眼調査が増えたという事実です。
特に個人課税については着眼調査の比率が急増しています。
(上記の定義では着眼調査を除いています)
少し古い数字ですが、個人に対する実地調査について、
平成17年度41,998件に対して、平成19年度は30,493件と27.4%も減少しています。
一方で着眼調査は、平成17年度の7,609件に対して、
平成19年度は、8,362件と10%程度増加しています。
つまり個人に対しては、深度のある実地調査と、
半日程度で終わらせる着眼調査に分けることによって、
税務調査の件数自体を増加させる傾向にあるわけです。
着眼調査の件数を増やすことにより、小規模な消費税事業者を
しっかりカバーするとともに、今まで所得が多額な者にしか実施できていなかった税務調査を、中低階級の所得者にも広げていく狙いが見えます。
また実地調査については、所得が高額な者、
もしくは悪質な課税事績ある者が重点的に狙われます。
セミナーではいつも言っているのですが、過去に重加算税が賦課された課税事績があると、以降の税務調査の対象となりやすいのはこのためです。
ぜひ、気をつけてください。
※2010年7月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。