個人事業主から同族法人への外注費が否認された事案
※2019年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
すでに個人の確定申告時期に入っていますが、
非常に気になる実際の調査事案がありますので、
それを今週と来週で共有・解説させていただきます。
さて、実際の調査事案については
来週に譲るとして、今回はその前提となる
判決を取り上げて解説します。
大阪地方裁判所・平成30年4月19日判決
「LPガス等の燃料小売業者が同族会社へ
支払った業務委託費(必要経費該当性)」
(TAINSコード:Z888-2201)
税務調査から地裁判決まで、下記の
事実内容と判断になっています。
※あえて簡易的に書きますので、詳細を
知りたい方はTAINSをご覧ください
【前提事実と税務調査】
・Aの屋号でLPガス・重油・灯油等の
燃料小売業を営む原告が、原告が代表者を
務めるB社にAの業務を委託していた
・税務署は外注費を必要経費に算入する
ことはできないとして更正した
・否認の根拠は「行為計算否認」
(所得税法157条1項)
すでに推察していただけるとは思いますが、
個人事業主が自身の法人に外注費を流した場合、
法人で役員報酬を取り、給与所得控除も
認められることになって、事業主自身の報酬が
必要経費として認められることになります。
また、(本判決では触れられていませんが)
個人事業主が支払った外注費は仕入税額控除、
法人が免税もしくは簡易課税の場合に、
全体として消費税が減ることにもなります。
【地裁判決】
・納税者が敗訴
・行為計算否認ではなく「Aの業務の遂行上
必要であるとはいえず、必要経費該当性の
判断基準における必要性要件を欠くものと
認められるから、原告の事業所得に係る
必要経費には該当しない」として、
必要経費そのものが認められないとした
ここで重要な判決文は、
「本件外注費を原告の事業所得に係る
必要経費として認めるとすると、個人事業主
(農家、個人商店など)と同族会社の代表者を
兼務する者の場合、事業主自身が従事する
業務を会社に外注し、その外注費を支払う
ことにすれば、本来は必要経費に算入する
ことのできない事業主自身の労働の対価を、
個人事業の必要経費とすることができる
こととなり、ひいては、税額の自由な操作を
許すことになりかねないのであって、
租税法の根本原則に反する不合理な
結論となることは明らかである。」
としていることです。
さて、ここまで読んでいただけると
下記も否認では?と思い当たるはずです。
〇個人の不動産所得と同族法人への管理料
〇個人開業医とMS法人
さらには、これがダメだというなら、
「税理士の会計法人はどうなるのか?」
というところまで広がってきます。
来週は、士業に対する税務調査で、
実際に否認指摘を受けた事案を取り上げ、
さらに掘り下げて解説することにします。
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