偽りの決算書とは?
今回のテーマは、『粉飾決算』です。
調査官時代に気をつけていたことのひとつが、
『粉飾決算』を行っている会社へ税務調査に入らないことです。
当然、追徴課税は見込めません。場合によっては、
税金を還付しなければならないケースも出てきます。
こういったミスは、調査官にとっては大きな減点になります。
『粉飾決算』というのは、何も大企業だけが行っているものではありません。
中小企業でも銀行から融資を受けるために、近年、頻繁に行われています。
予め事前調査で見抜くにために、私はこんなポイントに注意をしていました。
①「固定資産税があるのに原価償却費があまり計上されていない」
これは一番明確なパターンです。減価償却費に関しては、
もし経営状態が思わしくない場合、計上しないという手法がとれます。
こういった企業は、よほどのことがない限り調査対象から外します。
②「毎年のように小額ながら税金を払っている」
銀行から融資を受けるためには、赤字はぜひ避けたいものです。
そのため小額ながら毎年黒字にして、最低限の利益を上乗せします。
しかし、これは脱税にも該当するケースですので、
この条件だけで判断を下すことはもちろんありません。
③「役員の報酬があまり高くない」
多くの中小企業では、役員報酬は高く設定しているものです。
報酬が低いということは、企業にそれだけ余力がないことを示しています。
しかし、これも②同様に報酬を低くすることで、
役員は納める税金が少額で済みますので、巧妙な脱税の手口でもあります。
④「役員から借入金、役員への未払い金がある」
これも必ずチェックをします。
中小企業は、会社がまだ軌道に乗ってない時期、
経営状態が思わしくない時は、役員が身銭を切って融資を行うものです。
代表者や役員から借入金がある企業は、
経営状態が安定していないと見ることができます。
以上を複合的に判断して、調査対象の選定を行っていました。
どんな調査官であっても、粉飾を100%見抜くことは不可能です。
課税の公平性を保つためはに、ある一定期間が経過すれば
税務調査を必然的に行わなければなりません。
実は、弊社の『税務調査コンサルティング』にご依頼頂きました
クライアントに、この『粉飾決算』でお悩みの方がいらっしゃいました。
銀行の融資を受けるために、仮装経理を行っていたのですが、
実際の融資は先送りになってしまいました。
そんな折、税務調査が入ることになってしまったのです。
当然、多く申告しているわけですから、決算の修正を行うことになりました。
『粉飾決算』を修正する場合は、以下の手続きを行うことになります。
更正の対象事業年度の申告期限から1年以内の場合、
「更正の請求」を確定申告書と合わせて提出します。
(国税通側法第23条第1項)
申告年度から1年以上の場合は、「更正の請求」に該当しませんので
法定申告期限5年以内の分は、税務署長へ「嘆願」を行います。
これにより法人税の還付を受けることが可能になりますが
当然、いくつかのデメリットも発生します。
決算書の虚偽記載があった場合は、
過料処分などの罰則規定に該当することもあります。
何よりも銀行の信用を失うことは、大きなダメージとなるでしょう。
このご時世ですから、それなりの措置がとられるとみて間違いありません。
『粉飾決算』は経営者にとってはクセになることが多いので、
その判断はぜひ慎重に行って下さい。
※2010年2月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。