2014.10.14

偽りの決算書とは?

今回のテーマは、『粉飾決算』です。

調査官時代に気をつけていたことのひとつが、
『粉飾決算』を行っている会社へ税務調査に入らないことです。

当然、追徴課税は見込めません。場合によっては、
税金を還付しなければならないケースも出てきます。

こういったミスは、調査官にとっては大きな減点になります。

『粉飾決算』というのは、何も大企業だけが行っているものではありません。
中小企業でも銀行から融資を受けるために、近年、頻繁に行われています。

予め事前調査で見抜くにために、私はこんなポイントに注意をしていました。

①「固定資産税があるのに原価償却費があまり計上されていない」

これは一番明確なパターンです。減価償却費に関しては、
もし経営状態が思わしくない場合、計上しないという手法がとれます。
こういった企業は、よほどのことがない限り調査対象から外します。

②「毎年のように小額ながら税金を払っている」

銀行から融資を受けるためには、赤字はぜひ避けたいものです。
そのため小額ながら毎年黒字にして、最低限の利益を上乗せします。

しかし、これは脱税にも該当するケースですので、
この条件だけで判断を下すことはもちろんありません。

③「役員の報酬があまり高くない」

多くの中小企業では、役員報酬は高く設定しているものです。
報酬が低いということは、企業にそれだけ余力がないことを示しています。

しかし、これも②同様に報酬を低くすることで、
役員は納める税金が少額で済みますので、巧妙な脱税の手口でもあります。

④「役員から借入金、役員への未払い金がある」

これも必ずチェックをします。

中小企業は、会社がまだ軌道に乗ってない時期、
経営状態が思わしくない時は、役員が身銭を切って融資を行うものです。

代表者や役員から借入金がある企業は、
経営状態が安定していないと見ることができます。

以上を複合的に判断して、調査対象の選定を行っていました。

どんな調査官であっても、粉飾を100%見抜くことは不可能です。

課税の公平性を保つためはに、ある一定期間が経過すれば
税務調査を必然的に行わなければなりません。

実は、弊社の『税務調査コンサルティング』にご依頼頂きました
クライアントに、この『粉飾決算』でお悩みの方がいらっしゃいました。

銀行の融資を受けるために、仮装経理を行っていたのですが、
実際の融資は先送りになってしまいました。

そんな折、税務調査が入ることになってしまったのです。
当然、多く申告しているわけですから、決算の修正を行うことになりました。

『粉飾決算』を修正する場合は、以下の手続きを行うことになります。

更正の対象事業年度の申告期限から1年以内の場合、
「更正の請求」を確定申告書と合わせて提出します。
(国税通側法第23条第1項)

申告年度から1年以上の場合は、「更正の請求」に該当しませんので
法定申告期限5年以内の分は、税務署長へ「嘆願」を行います。

これにより法人税の還付を受けることが可能になりますが
当然、いくつかのデメリットも発生します。

決算書の虚偽記載があった場合は、
過料処分などの罰則規定に該当することもあります。

何よりも銀行の信用を失うことは、大きなダメージとなるでしょう。
このご時世ですから、それなりの措置がとられるとみて間違いありません。

『粉飾決算』は経営者にとってはクセになることが多いので、
その判断はぜひ慎重に行って下さい。

 

※2010年2月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。