債権者から財産を守る方法(その1)
※2018年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「債権者から財産を守る方法(その1)」ですが、
最高裁判決(平成11年6月11日)をご紹介します。
相続人に被相続人の財産が移転してしまうと、
その財産が結果として債権者(相続人が債務者)の物に
なってしまうケースがあります。
このようなケースにおいては「被相続人の財産を守りたい」
という要望があるでしょう。
この場合、
〇 遺産分割で何も相続しない
〇 相続を放棄する
〇 被相続人が遺言を書き、その相続人に何も相続されないようにする
という3つの方法が考えられます。
では、これらの方法は本当に有効なのでしょうか?
今回は最初の「遺産分割で何も相続しない」という内容を解説していきます。
まずは、上記最高裁で争われた事例の概要です。
〇 昭和54年2月24日:被相続人死亡(建物の相続登記せず)
→ 被相続人は借地権の上に住んでいたので、土地の登記は無し
〇 平成5年10月29日:妻は300万円の金銭消費貸借契約に係る
連帯保証をした。
〇 平成7年10月11日:上記金銭消費貸借契約に係る債務者の支払いが
遅滞してその期限の利益が失われたことにより、債権者は妻に対し、
連帯保証債務の履行、不動産の相続を原因とする所有権移転登記手続を
するよう求めた。
〇 平成8年1月5日ころ:建物について、妻はその持分を
取得しないものとし、他の相続人が持分2分の1ずつの割合で
所有権を取得する旨の遺産分割協議を成立させ、
その旨の所有権移転登記をした。
〇 平成8年3月21日:妻は自己破産
怒ったのは債権者です。
民法424条(詐害行為取消権)により、
「その遺産分割は無効である」と訴えたのです。
これに対して最高裁は下記と判断したのです。
〇 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、
詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
〇 ただし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有と
なった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の
単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、
相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、
財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。
〇 そうすると、前記の事実関係の下で、被上告人は本件遺産分割協議を
詐害行為として取り消すことができるとした原審の判断は、
正当として是認することができる。
結果として、「何も相続しない」という遺産分割は無効となり、
債権者の主張が認められたのでした。
今回の事例は税務ではなく法務ですが、
税理士のところには色々な案件が持ち込まれます。
そういう意味においては「最低限の法務の知識」を知っておくと共に、
会社法や民法などの他の法律が「少しでも」関係する場合には、
必ず弁護士に相談すべきでしょう。
そうしないと、税務ではなく、
法務により税理士が訴えられることになるのです。
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