2024.08.02

分割調整資金の必要性

※2023年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「分割調整資金の必要性」です。

相続税の基礎控除が縮減されたのが
平成25年改正度税制改正であり
平成27年1月1日以降の施行となりました。

施行まで2年近くの期間を要したことになりますが、
いわゆる「相続税対策」が一気に叫ばれるようになったのも、
ちょうどこの時期だったように思います。

相続税対策として列挙されるのは
1.納税資金対策
2.節税対策
この2つと言われています。

また、相続税負担の有無にかかわらず
必要となるのが、
「争続対策」
と言われています。

これら3つを総称して
「相続対策」となります。

1.争続対策
2.納税資金対策
3.節税対策

私見ではありますが、個人的には不足
しているように感じています。

不足していると感じるのは、
2.納税資金対策
です。

税理士が最も陥りやすいのは
「相続税試算を行った際、納税資金だけを確認すること」
かと思います。

確かに納税資金の確認は必要ですが、
納税資金「だけ」を確認すれば
問題は全て解決できるのでしょうか。

相続人である子が1人であれば
納税資金「だけ」を確認すれば
問題は生じないことが多いかと思います。

なぜならば・・・
最終的には子1人に財産が集中するため
争う可能性は限りなく少ないと言えるからです。

それでは・・・
相続人である子が複数人いる場合はどうでしょうか。

納税資金だけ確保すれば
全てが丸く収まるのでしょうか。

答えはNoです。

相続が発生すると、被相続人の財産は
相続人全員の遺産共有となります(民法898)。
つまり、相続人全員の共有財産です。

そのため、特定財産承継遺言(民法1014(2))
がなければ相続人全員の遺産分割協議
により遺産を誰が取得するのかを決定します。

遺産分割協議の結果を受け財産配分が決定され、
その結果として相続税総額を算出し、各人の
負担すべき相続税額が算出されることになります。

未分割であっても相続税総額は
算出されますが、申告期限内で
遺産分割を完了することが通常であることを
鑑みれば、遺産分割協議をした結果として
各人の相続税が算出されることになります。

お伝えしたいのは、民法があって相続税法があり
相続税額よりも遺産分割に重きがあるということです。

この感覚になると、
現場では遺産分割協議がまとまることが
最優先課題であり、その課題をクリアするためには
調整弁となる資金の存在が必要となります。

不動産や自社株などの分割しにくい財産が
全体財産に占める割合が多い場合、最終的には
代償資金で調整することになります。

また、特定財産承継遺言があり
相続人の遺留分を侵害した場合に
遺留分侵害額請求をすれば
請求された受遺者は金銭債務を
追うことになります(民法1046(1))。

この場合にも、最終的には資金で
調整することになります。

その意味でも納税資金「だけ」でなく
分割調整資金の確保は必要と考えます。

今後の相続対策は
1.争続対策
2.納税資金対策・分割調整資金対策
3.節税対策
と認識していただけると幸いです。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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