分掌変更による役員退職給与の否認
※2018年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「分掌変更による役員退職給与の否認」ですが、
平成29年7月14日の裁決をご紹介します。
中小企業の社長は分掌変更に伴う役員退職給与を支給された後も
何らかの形で経営などの関与することがあります。
それは大きな税務リスクをはらんでいるものの、
当の本人にはその意識がないこともよくあります。
今回の事例もそうですが、
「中小企業において起こりやすい事実関係」が出ていますので、
顧問先への注意喚起に是非、ご活用ください。
事実関係の中から一部のみを抜粋します。
〇平成23年5月20日:臨時株主総会で分掌変更に伴う
役員退職慰労金の決議
〇平成23年5月〇日;代表取締役社長から取締役会長へ
〇平成27年7月〇日:代表取締役へ復帰
K所長の解雇やFが問題を起こしたとして取締役を解任されたこと等を
踏まえての復帰決意ということは認定事実とされている。
〇分掌変更前は、ほぼ毎日、午前6時から6時半頃請求人に出社し、
午後4時から5時頃退社していたところ、
分掌変更後は、ほぼ毎日、午前7時から8時頃請求人に出社し、
午前中に退社していた。
〇××発症直後を除き、分掌変更前後を通じ、自ら自動車を運転して
通勤していた。
〇分掌変更の後、j事業所における流れ屑の取引価格の決定に係る権限を
F及びK所長に、流れ屑の配合方針の決定や機械設備の修理に係る権限を
F、K所長及びL所長に、徐々に移譲するようになった。
〇この権限移譲の過程においても、本件役員は、少なくとも、
単発的に発生する流れ屑の購入取引における流れ屑の評価について
FやK所長から相談を受けてアドバイスをしたり、
平成25年7月には、流れ屑の輸入取引に係る取引条件について
M社から直接連絡を受けることがあった。
〇本件役員は、本件分掌変更後の平成24年2月頃まで、
少なくとも22回以上、請求人の流れ屑の取引先である商社や
製鉄メーカーの幹部に対して飲食等の接待をした。
〇分掌変更の後、融資交渉等の金融機関との折衝に係る権限を
徐々にB(本件役員の長女)に移譲するようになり、
Bが、金融機関との間のコミットメントライン契約締結や
金融機関からの借入れの申込みを行った。
〇分掌変更に伴い、本件役員は、請求人のP信用金庫
及びQ銀行に対する債務に関し、それぞれ平成23年1月と
平成24年11月に各金融機関から同意を得て、
請求人の連帯保証人の地位から脱退した。
〇上記権限移譲の過程で、本件役員は、Bと金融機関との借入れに係る
利率等の条件交渉の場に立ち会い、自らの意見を述べることもあった。
〇平成24年7月30日:請求人の取締役会に出席し、B及びFと共に、
Bが取締役を任期満了したことによる代表取締役の資格喪失に伴い、
Bを改めて代表取締役に選定した。
〇平成25年5月:K所長が横領等の不正行為を働いたとして、
B及びFと共にK所長の解雇を決定。
K所長は、本件役員の妹婿として本件役員と並んで流れ屑取引に
長年携わっており、10年以上にわたってj事業所長を務め、
また少なくとも平成12年7月から平成21年3月までの間、
請求人の取締役であった。
〇本件役員は、本件分掌変更前と同様、取締役である本件役員、
B及びFのみを構成員として年5、6回不定期に開催される
経営会議に出席し、事業用資産の購入をB及びFと共に決定。
いかがでしょうか?
ここに記載したのは事実関係の一部だけですが、
このような事実関係があれば、当然に分掌変更による役員退職給与は
認定賞与とされるでしょう。
中小企業の社長は「税務調査官が見ているわけではないから、
事実関係はばれない」と誤解されている方も多いです。
しかし、様々な事実関係は申述や各書類という間接証拠から明白になり、
非常に多額の納税を迫られることになります。
顧問先さんで同様のことが起きないように、
このリスクを実例を挙げて注意喚起することが必要なのです。
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