分掌変更を税務調査で否認されないためには?(まとめ)
※2017年4月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「分掌変更を税務調査で否認されないためには?(まとめ)」です。
結果として、分掌変更を否認されないためには
どのようなことに注意をすればいいのでしょうか?
私が分掌変更をセミナーで解説する場合にお伝えしている点は下記です。
〇分掌変更後は代表取締役の名刺は捨てる。
・税務調査時は不明ですが、審査請求がなされ、
審判所の職員が事実確認のために、請求人を訪問した際に、
問題となった取締役が「代表取締役 〇〇〇」という名刺を
渡したことが裁決文に書いてあります(平成24年12月18日裁決)。
〇ホームページ、会社案内などに記載の組織図が分掌変更の実態と
合っているかに注意。本人のコメントも載せないべき。
・更正時に「ホームページの会社組織図には取締役と社長との間に
会長を位置付ける表記があったこと」が問題視されました(平成18年
11月28日裁決)
・ホームページに「取締役会長」として「〇〇に、そして日本・世界へ
いい〇〇を。」との記事を掲載していたことが問題視されました
(平成24年12月18日裁決)。
〇議事録、稟議書、報告書などへの氏名の記載、押印もしない。
・議事録には会長(取締役ではない)を出席取締役又は取締役会長とする
表記があったことが問題となりました(平成18年11月28日裁決)。
・これは会計事務所の担当者のミスによるものです。
〇新社長就任の祝賀会の開催をした場合の式次第、取引先への
代表取締役変更の通知、社内報の記事などの保存をしておく。
・社長就任祝賀会を開催したことは分掌変更の証拠の1つとなり、
納税者に有利なものとなります(平成24年12月18日裁決)。
〇退任後の給与の額はおおむね50%以上減らすべきですが、
他の従業員等の給与水準も考えて設定すべきです。
・従業員等と比べて、高額な給与が問題視されると、
みなし役員とされたり、関与している業務が重要なので、
相当額の給与が支払われていると判断されます(平成18年11月
28日裁決、平成24年12月18日裁決)。
〇出社の頻度は週1~2回、不定時のようなイメージ。
・ただし、これはあくまでも形式的な話なので、実態が重要です。
・月3~4回の出社であるにも関わらず、分掌変更が否認された事例が
平成24年12月18日裁決です。
〇融資などに伴う銀行員との面談には出席しない。
・反面調査がされれば、銀行内部の日報、稟議書、報告書などから
融資の現場にいたかどうかがの事実認定がされます。
・平成24年12月18日裁決では、これが問題視されました。
〇顧問税理士との面談には出席しない。
・結果として問題にはなりませんでしたが、平成24年12月18日裁決
では、これについても触れられています。
〇取締役会、経営幹部会などへの出席はしない。
・平成18年11月28日裁決では、取締役ではない会長が
「幹部会、品質管理委員会へ出席の上、経営陣の1人として経営方針等を
指示するあいさつを行っている」と原処分庁は主張しました。
・結果としては、会議そのものに重要性がなく、発言の内容もあいさつ程度
だったので、請求人の主張が認められました。
・単なる傍観者だったとしても、出席しない方がいいでしょう。
〇金庫の鍵、小切手帳、手形帳の管理はしない。
・過去3回で取り上げた事例の中ではこれについて触れられた部分は
ありませんが、これらに関しても関与すべきではないでしょう。
結果として、実態、事実関係として固めておくべきことは
「重要な業務」と「経営」には一切、積極的に関与しない、
ということです。
私見ではありますが、会長等としての籍はある訳ですから、相談されれば、
相談に乗る程度ならばOKと考えます。
分掌変更は法基通9-2-32にもあるとおり、
〇役員としての地位又は職務の内容が激変
〇実質的に退職したと同様の事情にある
ということが重要です。
つまり、「辞めてはいないが、辞めたことと同じ」ということです。
しかし、同族企業の社長(特に、創業者)が会長になり、
役員退職給与を支給された後であっても
〇口を出したい
〇毎日、出社したい
〇給料も相当額が欲しい
というケースも少なくありません。
もちろん、分掌変更の否認は税務調査官にとっても間接証拠を
積み上げることが必要であり、非常に面倒な作業であることは
間違いありません。
しかし、分掌変更が否認されたら、非常に多額の納税が課されることも
事実ですから、「分掌変更の実態」が伴うように、お客様にリスクも含め、
きちんと説明をしておく必要があるのです。
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