前回調査での否認項目が是正されていなければ重加算税になるのか?
※2021年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税務調査において調査官が重加算税と指摘する場合、
調査官の「勝手な」論理であることが多くあります。
今回から3回にわたって、調査官が重加算税と
指摘しがちな【誤った論理】に関して解説します。
先日、ある税理士から聞いたのですが、
「前回の調査で誤りと指摘され、修正申告した内容が
是正されずに同じ否認指摘を受けた場合、重加算税と
されるという内容のセミナーを受講しました」
という話がありました。
このセミナー講師が誰なのかはわかりませんし、
内容の詳細は伺っていませんが、言いたいことは
よくわかります。前回の指摘・修正内容が
是正されていないということは、「あえて」
同じ処理をしたということでしょうから、調査官も
前回の内容を知っている限り重加算税と言うでしょう。
たとえば、前回の調査で雑収入の計上が漏れており、
その修正申告をしているにも関わらず、今回も
該当する雑収入の計上がすべて漏れていた場合、
隠ぺい行為=「故意に」「わざと」除外したという
事実認定もあり得るかと考えます。
これはあくまでも、前回の調査で「雑収入の計上が
必要と認識したはず」であって、それをまた
計上していないというのは、漏れではなく
故意に除外したという推定がはたらくからでしょう。
では、このような事例の場合はどうでしょうか?
・法人の経費に個人の衣類購入費が混在
・作業着代など認められるべき経費も実際にある
・私的だと思われる経費についても領収書はある
・前回の調査では同じ論点に関して、
50%の経費を損金不算入として修正申告している
・担当調査官は「前回の調査でも同じことを
指摘されており、是正されていないのだから
重加算税」と指摘してきた
この事例において、仮装行為(領収書の改ざんなど)や
隠ぺい行為(存在する領収書を提示しない・破棄するなど)
がありませんし、それを推定されるような積極的な
事実も存在しません。
確かに、前回の調査では50%の経費カットを
認めているわけですが、それはあくまでも
「見解の相違」によるものかもしれません。
購入した衣類の種類や用途によるのかもしれませんので、
前回の調査とは「別途」、今回の調査では
その経費性を判断すべき事項でしょう。
経営者が購入した衣類費のうち、前回の反省から
そのほとんどが経費にされておらず、たまたま
混在した経費もある、という「ミス」かもしれません。
さらにいえば、前回の調査で修正申告をした、
衣類購入代(消耗品費)を半分損金不算入にした
という事実も、調査全体としての「落しどころ」
だっただけであって、それが揺るがない適正な
会計・税務処理とも言い切れないでしょう。
このように、調査官は前回調査での否認項目が
是正されていないという事実をもって重加算税と
指摘しがちですが、それが「仮装・隠ぺい」行為を
推定できる場合と、できない場合があるわけです。
調査官は前回の調査事績を見てから
今回の調査に臨むわけですから、是正されていない
ことを根拠に重加算税と指摘してきますが、
その内容によって反論は可能なのです。
来週水曜の本メルマガでは、前回の調査でも
指摘された毎期の期ズレが重加算税になるのか、
について解説します。
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