創業者社長の役員退職給与の税務上の限度額(その3)
※2017年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「創業者社長の役員退職給与の税務上の限度額(その3)」
ですが、熊本地裁(平成25年1月16日判決)を例に挙げます。
前回は功労金加算について取り上げましたが、
今回は平均功績倍率法で計算した金額を超える金額が
過大か?否か?という論点です。
役員退職給与という名目であれ、功労金という名目であれ、
役員退職給与に変わりはありませんので、違う事例を使い、
同じ論点を解説することになります。
まずは、この事例の前提条件です。
〇 土木工事業等を営むことを目的として昭和54年12月に設立
〇 資本金は1,000万円
〇 設立時から平成18年11月に死亡するまで、
代表取締役の地位にあった。
〇 遊漁船で海釣り中、アンカーロープが右足に絡み、
海中に転落して死亡
〇 約1億9,000万円の死亡保険金が法人に入金
〇 1億円の役員退職給与を支払った
〇 役員退職給与の相当額は4,293万円として更正
→ 最終報酬月額50万円×勤続年数27年×平均功績倍率3.18
争点は下記2点です。
〇 平均功績倍率法の合理性
→ これは当然、合理的なので、割愛。
〇 役員退職給与が過大か?否か?
この前提の下、熊本地裁は後者に関し、下記と判断しました。
〇 平均功績倍率の相当性について
本件比較法人(4法人)の功績倍率は、高いものから、
3.83、3.00、3.00、2.87であり、
平均功績倍率(3.18)の周辺にあって、大きなばらつきは
認められず、〜本件平均功績倍率には相当性が認められる。
〇 最終報酬月額によることの合理性について
・ 前代表者は、原告設立時から代表取締役であり、死亡時まで
原告の経営全般に従事しており、職務内容等に変化はなかった。
・ 前代表者の月額報酬は、平成12年に50万円に減額されて以来、
同額のままである。
・ 同金額が他の使用人に対する給与額と比較して低額であるなど、
同額が前代表者の報酬額として特に低額であったと認めることは
できない。
ちなみに、原告(納税者)は「貢献度」を主張しましたが、
これを熊本地裁は認めませんでした。
〇 原告による前代表者の貢献度に係る主張は、「30歳の若さで」
会社を設立して以来、「仕事一筋の職人として会社の運営に
貢献してきた。
〇 前代表者は「一代で原告を現在の規模に育て上げ、・・・原告の
事業の中枢を担っていた」というにとどまり、一般的、抽象的な
内容にとどまる
〇 本件全証拠によっても、原告の利益率や成長性が類似法人と
比較して特に高いなど、前代表者において創業者として
格別多大な功労があったことを推認させる具体的な事実を
認めることはできない。
〇 このような創業者としての一般的な貢献や功績は、代表者であり、
かつ創業者である者であれば認められる事情であって、
本件平均功績倍率の算出過程等において十分に考慮されている。
いかがでしょうか?
この事例において着目すべきは「原告の利益率や成長性が類似法人と
比較して特に高いなど、前代表者において創業者として
格別多大な功労があったことを推認させる具体的な事実を
認めることはできない」という部分です。
では、同業他社よりも利益率が高く、多額の利益を計上する優良法人を
作り上げた創業者社長の場合はどう判断されるのでしょうか?
これに関しては下記DVDで解説していますので、
是非、ご覧いただければと思います。
この1本をご覧頂ければ、役員退職給与の過大額につき、
「網羅的に」理解できる内容になっております。
「社長の役員退職給与の税務上の限度額はどう考えるのか?
〜創業者社長の話を中心として〜」
※「月刊 提案型税理士塾」と表示されていますが、
【単品購入】のサイトです。
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