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2016.11.21

勘定科目の間違いと重加算税

※2016年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「勘定科目の間違いと重加算税」ですが、

平成14年4月25日の裁決をご紹介します。

本件は、■■■■■■■■用資材の加工・製造を業とする同族会社である

審査請求人(以下「請求人」という。)が、倉庫料収入等の振込入金に

ついて普通預金出納帳(以下「本件預金出納帳」という。)の相手勘定

科目欄を「雑収入」とすべきところ「現金」として経理処理した行為が

重加算税を賦課すべき事実に該当するか否かを争点とする事案です。

また、争点の対象となった取引は以前においては「雑収入」として適正に

処理されていましたが、2年間の取引停止期間があり、かつ、経理担当者

である代表者の妻が経理に明るくない者であったため、取引再開後に起きた

ミスでした。

これにつき、原処分庁は「代表者の妻は、今回入金期間の本件雑収入の

入金を「雑収入」として本件預金出納帳に記帳すべきことを知っており、

かつ、前回入金期間の本件雑収入については自ら「雑収入」と記帳していた

のであるから、同人が、今回入金期間の本件雑収入について「現金」と

記帳することが誤りとは思っていなかったとは認められない。」と主張

しました。

しかし、国税不服審判所は納税者の主張を認め、下記と判断したのでした。

〇本件調査において、代表者の妻は調査担当職員に対し本件補助簿を隠す

ことなく、自らが本件補助簿に基づき■■■■■■との取引形態、今回

入金期間の本件雑収入の経理処理の方法について正直に説明している

ことが認められる。

〇代表者の妻が前回入金期間の本件雑収入については、本件預金出納帳の

相手勘定科目欄を空欄にして、本件預金出納帳を■■税理士に交付していた

ところ、■■税理士から「雑収入」と記帳されてきたので、見よう見まねで

その後は「雑収入」とゴム印を押印して経理処理をしていた旨申述している。

そして、今回入金期間の本件雑収入については振込入金されていることから、

代表者の妻は、本件預金出納帳の摘要欄に■■■■■■からの入金である

ことを示すため「Aゴムより」と記帳し、振込入金であるから「現金」と

記帳すればよいと思い本件預金出納帳の相手勘定科目欄に「現金」と記帳

して本件預金出納帳を■■税理士に交付していたことが認められる。

〇■■税理士は、今回入金期間について本件預金出納帳の相手勘定科目欄に

「現金」と記帳されていることから、当初はこの誤りに気付かずに関係帳簿

の帳じりを合わせる修正仕訳により、総勘定元帳の貸借を同じくしていた

もので、平成12年3月期の決算に当たり、初めて「雑収入」と記帳すべき

ところ、「現金」と記帳された誤りに気付きこれを是正していることが

認められる。

〇そうすると、請求人の申告が過少申告になった原因は、代表者の妻の

記帳誤りが発端であるが、■■税理士が代表者の妻が記帳している本件

補助簿の記帳内容を十分に検討しなかったこと及び現金、手形等の実際在高

と帳簿残高を照合することなく、安易に期末決算修正を行い貸借対照表及び

損益計算書を作成したことによるものと認められる。

〇本来、複式簿記の原則に従って記帳し、決算期末において資産及び負債の

実際在高を帳簿残高と照合すれば、記帳誤りが判明するはずであるが、

請求人の場合は、代表者が経理に関与せず、本件補助簿を作成していた

代表者の妻も経理知識に乏しく、それに加えて■■税理士も貸借対照表

及び損益計算書の作成に当たって、十分な検討を行わなかったことから、

代表者の妻の単純な記帳誤りを発見することができず、誤りのある

貸借対照表及び損益計算書を基に確定申告書が作成され、そのまま確定申告

に至ったものと認められる。

〇ところで、原処分庁は、代表者の妻は今回入金期間の本件雑収入を

本件預金出納帳に記帳するに当たり、その相手勘定科目欄に「雑収入」と

記帳すべきことを知っていながら故意に「現金」と記帳した旨主張する。

〇しかしながら、代表者の妻は前回入金期間は本件預金出納帳の相手勘定

科目欄に「雑収入」と記帳しているところ、2年後に再開された今回入金

期間については、本件預金出納帳の相手勘定科目欄に「現金」と記帳して

いるが、その摘要欄には「Aゴムより」と記帳し、■■■■■■からの

振込入金があった事実を明確にしていることからすると、故意に相手勘定

科目欄に「現金」と記帳したとは認められない。

〇そうすると、代表者の妻が本件預金出納帳の相手勘定科目欄に「雑収入」

と記帳すべきところを「現金」と記帳したことについては、過少申告を

意図的に行うためのものとは認められず、また、これらのことに事実の

隠ぺい又は仮装、さらに、偽りその他不正の行為があったとも認められない。

したがって、この点に関する原処分庁の主張は採用することができない。

いかがでしょうか?

同様の状況の下、重加算税との指摘を受けるケースは十分に想定されます。

是非、本裁決の状況を覚えておいて頂ければと思います。

なお、重加算税に関しては下記裁判もありますので、参考にして頂き、

重加算税の本質を理解して頂ければと思います。

〇 和歌山地裁(昭和50年6月23日)

国税通則法68条1項に規定する「‥‥の計算の基礎となるべき事実の全部

又は一部を隠ペいし、又は仮装し」たとは、不正手段による租税徴収権の

侵害行為を意味し、「事実を隠ペい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏

することを、「事実を仮装」するとは、所得.財産あるいは取引上の名義を

装う等事実を歪曲することをいい」いずれも行為の意味を認識しながら

故意に行うことを要するものと解すべきである。

〇 名古屋地裁(昭和55年10月13日)

国税通則法68条は、不正手段による租税徴収権の侵害行為に対し、制裁を

課することを定めた規定であり、同条にいう「事実を隠ぺいする」とは、

課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠ぺいし

あるいは故意に脱漏することをいい、また「事実を仮装する」とは、

所得財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかの

ように装う等、故意に事実を歪曲することをいうと解するのが相当である。

〇最高裁(平成6年11月22日)

納税者は、正確な所得金額を把握し得る会計帳簿を作成していながら、

3年間にわたり極めてわずかな所得金額のみを作為的に記載した申告書を

提出し続け、しかも、その後の税務調査に際しても過少の店舗数を記載した

内容虚偽の資料を提出するなどの対応をして、真実の所得金額を隠ぺいする

態度、行動をできる限り貫こうとしているのであつて、申告当初から、真実

の所得金額を隠ぺいする意図を有していたことはもちろん、税務調査が

あれば、更に隠ぺいのための具体的工作を行うことをも予定していたことも

明らかといわざるを得ない。

以上のような事情からすると、納税者は、単に真実の所得金額よりも少ない

所得金額を記載した確定申告書であることを認識しながらこれを提出したと

いうにとどまらず、本件各確定申告の時点において、白色申告のため当時

帳簿の備付け等につきこれを義務付ける税法上の規定がなく、真実の所得の

調査解明に困難が伴う状況を利用し、真実の所得金額を隠ぺいしようという

確定的な意図の下に、必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を

行うことも予定しつつ、前記会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の

大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を

提出したことが明らかである。

したがつて、本件各確定申告は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、

国税通則法68条1項にいう税額等の計算の基礎となるべき所得の存在を

一部隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出した場合に

当たるというべきである。

 

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