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2025.01.10

医師における給与・外注費の区分

※2024年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

年明け初め水曜の本メルマガでは、税務判断における
永遠の課題・論点ともいえる「給与か外注費」について、
複数回に分けて職業別に解説します。今回は「医師」です。

まず、国税庁の質疑応答事例で明確にされている事項として、
個人開業医が産業医として受け取る報酬は【給与】です
(医療法人が勤務医を派遣した場合は法人の収入)。

「産業医の報酬」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/13/01.htm

また、医師が開業医の休みに代診する、休日・祭日や夜間に
非常勤医師として勤務する場合も【給与】となります。

代診医など非常勤として活躍する個人医師の場合、
所得税の確定申告において大量の「給与所得の源泉徴収票」
があることから、支払側の処理も間違ってることはないだろうと
思っていましたが、意外にも外注費と誤っているケースがあります。
古い公開裁判事例ですが、下記でも明示されています。

「非常勤医師の報酬(2件)」
https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0204020000.html

これら裁決事例の中では、非常勤医師の受ける報酬は
雑所得や事業所得ではなく、給与所得とされる根拠として、

●非常勤医師としての服務は、病院長等の管理監督の下に
一定期間労務を提供していたものと認められること

●診療に必要な人的、物的設備は病院等が提供していること等からみて
請求人の行った労務の提供に独立性があるとは認められないこと

の大きく2点とされていますが、最新の公開裁決事例でも
まったく同じ判断がなされています。

「医師が健康診断業務に係る役務の提供の対価として
関与先の病院等から受領した報酬は、給与所得の収入に
当たるとした事例」(令和3年11月19日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0203120000.html#a125_2

さて、所得税基本通達には、医師の給与・外注費(事業所得)
それに関して似たような2つの規定があります。

所得税基本通達28-9の2
(医師又は歯科医師が支給を受ける休日、夜間診療の委嘱料等)
医師又は歯科医師が、地方公共団体等の開設する救急センター、
病院等において休日、祭日又は夜間に診療等を行うことにより
地方公共団体等から支給を受ける委嘱料等は、給与等に該当する。
(注)地方公共団体等から支払を受ける委嘱料等に係る所得で、
事業所得に該当するものについては、27-5(5)参照

所得税基本通達27-5
事業所得を生ずべき事業の遂行に付随して生じた次に掲げる
ような収入は、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入する。
(5)医師又は歯科医師が、休日、祭日又は夜間に診療等を
行うことにより地方公共団体等から支払を受ける委嘱料等

一見すると違いがわかりにくい通達の規定ですが、
前者は「地方公共団体等の開設する救急センター、病院等」
で勤務した場合、後者は「自医院で診療」をした場合であって、
同じ名目の委任料であっても、給与と事業所得に分かれます。

このように、個人医師の場合は【どこで勤務するか】によって
給与か外注費かが区分される、と理解すればわかりやすいでしょう。

なお、非常勤医師に対して「給与」を支払う場合の源泉区分
(日額・月額/乙欄・丙欄など)は下記を参考にしてください。

個別通達(昭和57年10月25日 直法6-8)
「派遣医の給与所得に対する源泉徴収税額表の適用区分について」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/821025/01.htm

平成23年6月7日公開裁決事例
非常勤医師の報酬に適用する源泉徴収税額表の区分等ついて
http://www.kfs.go.jp/service/JP/83/12/index.html

来週水曜の本メルマガでは、職業的に規制(業法)があることから、
外注費ではなく給与と判断される業種について解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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