反面調査で事実が曲がる?
今回のテーマは、『 反面調査で事実が曲がる? 』です。
弊社が相談を受けている事案の中で、
反面調査をされたことで「事実関係が曲がってしまった」事案が
複数発生しておりますのでご紹介したいと思います。
ある会社が商品の売買(仲介)に絡み、顧客を紹介してもらったことで
口銭(紹介料)を支払い、情報提供料として全額損金計上していました。
口銭は粗利額の約半分を紹介者(多数)にキックバックしているのです。
当初は、この口銭については交際費ではないかとの指摘を受け、
調査官とのやり取りが続いていたのですが・・・
ある特定の売買で、調査官が売主側に反面調査をかけたところ、
「紹介者は何も絡んでいない」との回答をしました。
つまり、情報提供料か交際費かで争っていたはずなのに、
反面調査の結果、そもそも紹介者が役務提供をまったくしていないという
事実に曲がってしまい、口銭自体が否認指摘され、
さらに重加算税だと言われているのです。
(いまだ決着はしておりませんが、更正になりそうです)
この事案については、なぜ反面調査先が「紹介者は何も絡んでいない」
と発言したかというと、この反面調査先は紹介者のことは当然知っているのですが、
調査対象法人(仲介役)のことはもとから知っており、商品の売買は
調査対象法人が仕切ってしたものだという認識だったからです。
「事実」はあくまでも紹介者がいたから売買が成立したのです。
口銭なのであれば、全額損金かそうでないかの争いをすることができます。
しかし・・・調査官には事実自体が曲がって解釈されているのです。
反面調査が行われた結果として、反面調査先が調査先とは
まったく違う発言をすることで、事実関係が曲がってしまう典型例です。
なぜこのようなことが起こるのか?
それは、「調査官が望む=否認する方向」に
事実関係を解釈(認定)しようとするからです。
上記事案でも、調査対象者寄りに考えてみると、
あくまでも反面調査先の「認識の相違」にすぎないはずです。
調査官は納税者(調査対象者)を性悪説にたって調査しています。
実際に事実とはまったく違うことを主張する人が多いのも現実です。
しかし、事実をまったく違うことに解釈(認定)されたら、
事実を語っている人がバカをみるのは明らかです。
また、反面調査で事実を証明できた別の事案もあります。
役員である妻が、持ち株(15%)を知人である銀行の支店長(個人)
に有償譲渡しました。以前規定があった
「業務主宰役員の90%ルール」の頃です。
調査官は知人(=銀行の支店長)に反面調査を行い、
「そちらの金融機関は、立場上取引先の株主になってはいけない
との内規があるのではないですか?」と揺さぶってきたそうです。
否認するのを前提にした発言で、許されるものではありません。
この事案では反面調査先の方が、断固として
「会社の将来性に賛同し、長年の友人として譲ってもらった」
と発言したことで、最終的には譲渡の「事実」が認められました。
さて、これらの事案から学ぶべきことは、
①税務調査の有無にかかわらず、事実を明確にするための
やり取りの書面等をしっかり残しておくこと
②反面調査をされてもいいように、取引先とは
しっかり認識を合わせておくこと
③税務調査で事実関係がグチャグチャになったときは
「書面で」事実を申し立てること
(口頭ではお互いが事実を整理できにくい)
また、これらの事案ではないのですが、反面調査先が、
「自分に不利だったら事実を曲げてでも発言する」ことがあります。
つまり、保身のために相手に不利益なことを言うのです。
こんなことが起こらないようにするには、
事実が何かをきちんと説明できるものが必要になるのです。
反面調査で事実が曲がってしまってからでは大変なことになるのですから。
※2011年11月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
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