反面調査で実害を被ったら
春の税務調査シーズンも終盤を迎えました。
まだ終わっていない調査も、あと2週間もすれば
結了する事案がほとんどかと思います。
直近の調査は、税務調査の手続きに関する法改正が
始めた適用になったシーズンであり、
私としても手探りの部分があったことは確かです。
しかし、昨年から改正が「ほぼない」状態になっているのが
「反面調査」に関する規定です。
まず反面調査は、法律で認められた行為です。
国税通則法第74条の2等にはこのような規定があります。
「イに掲げる者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする
義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは
物品の譲渡を受ける権利があると認められる者」
これは法人税の質問検査権を規定したものですが、
他の税目でも同じような文言が規定されています。
さて一方で、法律を解釈した通達には
反面調査に関する記載がなく、規定されているのは
事務運営指針のたった一部分のみになります。
調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/
3 調査時における手続
(6) 反面調査の実施
取引先等に対する反面調査の実施に当たっては、その必要性と
反面調査先への事前連絡の適否を十分検討する。
(注)反面調査の実施に当たっては、反面調査である旨を
取引先等に明示した上で実施することに留意する。
まず反面調査で大事なことは、
①法律に規定されている以上、認められた行為であること
②法律では反面調査の要件は規定されていないこと
③ただし事務運営指針には規定があること
④「適否を十分検討」していないと考えられる場合は、
事務運営指針違反を主張することができること
という考え方です。
ただし、事務運営指針の書き方も曖昧であるため、
実際に反面調査に行かれてしまったら
納税者に勝ち目がないと考えるべきです。
(実際に反面調査の不当性が納税者が勝った裁判は
今までに見たことがありません)
では、事務運営指針しか武器にならないのでしょうか?
ここで、「国家賠償法」という法律を知っておいてください。
第1条第1項
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を
行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を
加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
例えば、反面調査の結果として、
・取引先からの信用が失墜し取引を停止された
・顧客からの信用を失い将来的な売上が逸失した
・銀行からの融資が受けられなくなった
などの実害が生じた場合、国家賠償法のこの規定によって
賠償請求できる場合もあるのです。
税理士の職務は「もめ事が起こったら対応できること」
ではなく、「もめ事を起こさないこと」です。
反面調査に行かれそうになったら、国家賠償法を持ち出し、
「反面調査の結果、実害が生じたら賠償請求までしますからね」
と調査官に事前に釘を刺すことが重要なのです。
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2013年6月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。