反面調査に釘を刺す
※2015年9月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
反面調査は、判決・裁決等を読むと、ほとんどのケースで
税務署(調査官)の「裁量の範囲内で」とされており、
結果として反面調査に行かれてしまっては、
実害でも生じない限り、何を主張しても
調査手続きに違反している、とは言いにくいのが実態です。
では、反面調査は本来、どのような場合に行うことが
できるのでしょうか?まず法的要件を確認します。
国税通則法第74条の2(カッコ書きを除く)
国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、
所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について
必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、
当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する
帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示
若しくは提出を求めることができる。
と規定されており、反面調査は質問検査権の行使の一形態ですから、
「必要性があるとき」に限られていることがわかります。
反面調査ではなく、普通の税務調査であれば、
「その必要性は?」と問うても、「所得と税額が正しく
申告されているかの確認です」と言われてしまえば終わり。
確かに、その通りですから。
では、反面調査はどうなのでしょうか?
「反面調査の必要性」を調査官に問えば、本当に
回答できる場合のみ、実施されているのでしょうか?
法的には上記規定しかなく、法令解釈通達・事務運営指針
にも、反面調査の必要性を解説・規定したものはありません。
一方で、国税の内部通達では下記の規定があります。
「税務調査手続等に関するFAQ」
(職員用、平成24年11月 国税庁法人課税課)
問1-11(一部抜粋)
無申告行政指導を実施する前に銀行調査を実施することは可能か。
(答)
銀行調査は、質問検査権の行使を伴う反面調査として
行うこととなるが、反面調査については、取引先等の
反面調査を実施しなければ納税義務者の適正な課税標準等を
把握することができないと認められる場合に限り行うこととしている。
ここにある通り、反面調査は「取引先等の反面調査を
実施しなければ納税義務者の適正な課税標準等を
把握することができないと認められる場合に限り行う」
という「必要性」が必要なのです。
しかし、現実的に考えると、反面調査に行かれてしまった後で、
「どのように主張すれば手続き違反を問えますか?」と
よく質問を受けますが、それは実質的に不可能です。
なぜなら、調査官に「反面調査の必要性があったのか?」
と問えば、「必要性があった」としか答えないでしょう。
税務署が必要と判断した、と言われればそれまでです。
(実際の判決でも、反面調査の違法性で納税者が
勝った事案は、ほぼ皆無と言っていいでしょう)
反面調査は行かれてしまうと、後で何を争っても勝てない。
これが現実なのです。
だからこそ、調査現場では上記の内部通達を提示し、
「この調査では、帳簿書類などもきちんと揃っていますし、
反面調査をする必要などないですよね?」
と、調査官に「事前に釘を刺しておくこと」が重要なのです。
あくまでも、反面調査は行かれてから手続き違反を問うもの
ではなく、【行かせない】ことが大事ということです。
ぜひ、調査現場で実践してください。
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