反面調査の必要性とは?
2013年度は例年よりさらに多くの調査相談がありましたが、
その中でも3件、反面調査の「被害」に関する相談がありました。
・何の予告もなく反面調査に行かれた
・反面調査の結果、取引先からクレームがきた
・すべての帳簿・原始資料を提示し、明らかに
必要性がないのに反面調査に行かれた
反面調査に関してクレームを入れる場合、難しいのは
反面調査の法的規定もしくは通達・事務運営指針等が
「これはダメ」という明確な基準を示していないことです。
例えば、反面調査には下記の規定があります。
昭和36年7月14日国税庁長官通達
「いたずらに調査の便宜のみとらわれ、納税者の事務に必要以上の
支障を与えることのないよう配慮し、ことに反面調査の実施に当っては、
十分にその理解を得るよう努める」
昭和51年4月1日税務運営方針の一部「調査方法等の改善」
「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量に
おいて社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て
行うものであることに照らし、一般の調査においては、事前通知の励行に努め、
また、現況調査は必要最小限にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを
得ないと認められる場合に限って行うこととする。」
ここに書かれているのは「十分にその理解を得る」
「客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って」
と明記されていますが、調査官に
この条件を満たしていないとクレームをいれても、
満たしていると言われてしまえば、もはや水かけ論です。
しかし、そもそもの法令解釈から考えるに、
やはり反面調査には要件があると考えなければなりません。
国税通則法第74条の2 (当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は
税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査を
行う場合に限る。)は、所得税、法人税又は消費税に関する調査について
必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、
当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件
(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物消費税法第二条第一項
第十一号(定義)に規定する課税貨物をいう。第四号イにおいて同じ。)又は
その帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件
(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)
において同じ。) の提示若しくは提出を求めることができる。
と規定されており、普通の調査であろうと、
反面調査であろうと、「必要があるとき」が要件になります。
では、反面調査における「必要があるとき」とは
どのようなケースなのでしょうか。
租税法第18版(弘文堂)で金子宏先生は、
反面調査についてこう書かれています(790ページ参照)。
「反面調査は、特に必要があると認められる場合のほかは、
本人調査によって十分な資料の取得収集ができなかった場合にのみ
認められる、と解すべきであろう」
この注釈として、本書には複数の裁判が参照されていますが、
金子先生の見解は上記なのです。
これは考えてみれば当たり前で、反面調査がなぜ認められているのか
というと、本人調査で資料がない、また資料が偽造されているなどの
蓋然性が高い場合に、本人調査では本当のところがわからないので、
あえて反面調査を認めているとしか解釈できません。
だとするなら、反面調査にはきちんと要件があって、
それを満たさなければ違法性が高いというわけです。
今年相談があった事案の中で、1件だけですが、
抗弁書を作成し、税務署に提出しました。
反論の根拠は、上記書籍の引用です。
明らかに、反面調査をする必要性がない調査でしたが、
主要な取引先すべてに無予告による反面調査が実施されました。
調査官は反面調査の要件など考えたこともなかったようですが、
税務大学校の顧問をされている金子先生の見解ですから、
無視はできないと判断したものです。
もちろん、反面調査で実害が発生した場合、
国家賠償法により損害賠償も辞さないのですが、
反面調査による実害を証明することは相当難しいでしょう。
私は実務上、反面調査に行かせないのが税理士の仕事だと
考えています。だからこそ、上記金子先生の見解を支持し、
引用して主張することが有効なのです。
反面調査に要件はあるのです。
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