1取引相場のない株式評価に関する検討(2) ~純資産株価~
※2024年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、
「取引相場のない株式評価に関する検討(2) ~純資産株価~」です。
前回から純資産株価の検証をしておりますが、
今回は、被相続人の死亡時に評価会社が
生命保険金を取得する場合における
純資産株価の考え方を通じて、
直前期末方式を一部修正する考え方を検証します。
前回では、
原則として、1.仮決算方式
例外として、2.直前期末方式
であることを示しました。
ただし、例外が認められるのは、
「評価会社が課税時期において仮決算を行っていないため、
課税時期における資産及び負債の金額が明確でない場合において、
直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく
増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは」
となります。
そのうえで、評価明細書通達では
「相続税評価額」欄、「帳簿価額」欄については、
以下と定められています。
―――
イ 「相続税評価額」欄については、直前期末の資産及び負債の課税時期の相続税評価額
ロ 「帳簿価額」欄については、直前期末の資産及び負債の帳簿価額
―――
この場合であっても、
評価時点は「課税時期」となります。
つまり、評価明細書通達では、
評価対象となる財産内容や財産数量は
「直前期末」の資産及び負債を対象として
評価時点は「課税時期」とすることを定めています。
ただし、評価明細書通達においては、
被相続人が被保険者となっている生命保険契約につき
被相続人の死亡事故発生により評価会社に
生命保険金請求権が生じた場合における修正の考え方を
示しています。
―――
(注)
中略
2 被相続人の死亡により評価会社が生命保険金を取得する場合には、
その生命保険金請求権(未収保険金)の金額を「資産の部」の
「相続税評価額」欄及び「帳簿価額」欄のいずれにも記載します。
―――
この規定を読む限りは、
直前期末方式を採用する場合であっても、
課税時期で確定している事実に基づき、
評価の一部修正をしていると考えられます。
例:
契約者(保険料負担者):評価会社
被保険者:被相続人(社長など)
保険金受取人:評価会社
保険積立金(帳簿価額):3,000万円
死亡保険金:1億円
決算を越えて5か月後に
被保険者に死亡事故が発生したため
評価会社の株価評価を行うことになった。
当該死亡保険金のうち5,000万円を
死亡退職金に充当するものとし、
全額損金算入できるものとする。
ただし、弔慰金は無視する。
仕訳(単純化):
(借方)
未収金 1億円
(貸方)
保険積立金 3,000万円
雑収入   7,000万円
(借方)
退職金 5,000万円
(貸方)
未払金 5,000万円
直前期末方式であったとしても
課税時期(相続時)までに
事実が一部確定していますので、
確定事実を直前期末に反映させる
ことになります。
そのため、5表には以下を追加することになります。
(資産)
生命保険金請求権 1億円
(負債)
未払退職金 5,000万円
未払法人税等  740万円(※)
※保険差益×37%
(雑収入7,000万円-退職金5,000万円)×37%
また、当該生命保険契約は課税時期には
存在しないことになりますので、
保険積立金からは
「相続税評価額」「帳簿価額」ともに
削除する必要があります。
評価明細書通達においては、
上記の生命保険金請求権の処理については
明確に規定していますが、
例えば、直前期末を越えて課税時期までには
・土地売却
・オペレーティングリース償還
などがある場合に、これを反映させるかは
明確に規定されていません。
しかしながら、
原則は仮決算方式であることを鑑みた場合、
直前期末方式であっても
重要な事象については、可能な限り、
直前期末の内容に反映させるべきではないかと
考えています(私見)。
次回も引き続き、純資産株価を検証していきます。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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