否認根拠を明示させる
今回のテーマは、『否認根拠を明示させる』です。
ここから2ヶ月ほどは税務調査の最盛期になります。
弊社への相談は、下記URLをご覧ください。
http://kachiel.jp/tax/consulting2.html
相談サービスの内容がわかりにくいとの指摘をいただきましたので
説明させていただきますと、相談内容が同じであれば
料金内でいつまでも対応方法をアドバイスさせていただきます。
否認指摘に対して反論したけれど、さらに反論された・・・
このようなケースは追加のフィーはいただきません。
(あくまでも同じ否認指摘事項に対してのみです)
さて、ご相談いただくケースでも同じなのですが、
税務調査において否認指摘を受けた場合に気を付けていただきたいのは、
「否認指摘の根拠を明示してもらう」ということです。
こう書くと当り前のように感じますが、
ほとんどのケースで否認根拠が曖昧なのです。
先日相談があった事案では、売上の計上時期に関してモメていました。
法人の取締役が執筆した書籍にかかる印税を
法人の売上・入金としていましたが、その時期が問題になったのです。
調査官の指摘は、「印税収入は、発行部数が明確になった時点で
計上すべき」だと主張しました。これには異論がありません。
しかし、法人側からすると「発行部数が明確になった時点」とは
いつなのかについて争いが起こったのです。
出版社が発行部数を決めるので、出版社は「いつ・何部刷るのか」は明確です。
しかし、法人には「そろそろ○○○○部重版かけますね」
という連絡は事前にあるものの、「いつ刷るのか」は不明確なのです。
その出版社は、印税の支払い起算日を、印刷した日ではなく、
本の奥付日(裏に印刷している日)に設定していたのです。
奥付日は出版社が適当に設定することが可能です。
例えば、同じ9月に重版の連絡を出版社から受けたとしても、
入金は11月と12月だったり、時期がバラバラなのです。
(つまり、9月と10月に重版をしている)
著作権者である法人としては、何部重版がかかるのか事前にわかるので
印税金額が明確である(印税率は一定)ものの、その時期が明確ではないため、
売上の計上を入金の時期としていたのです。
(実際に入金されてから印税通知書を受け取っています)
この口論の中で調査官は、「では出版社に反面調査に行きます。
出版社が印税を損金にしている時期に、法人は売上を計上すべきです」
と主張してきました。これは正しい主張なのでしょうか?
確かに、基本的にはこちらの売上と取引先の損金計上時期は
一致していなければおかしいと感じます。
しかし、売上の計上時期は法人税法第22条第2項や、
法人税基本通達2-1-5などに規定されており、
その中には当然ながら、「相手方の計上時期と合わせなければならない」
などという文言は一切ないのです。
この事案に関しては、「出版社の損金計上時期に合わせなければ
ならない根拠はない」ことを抗弁書で提出しました。
その上でやっと、印税収入は何を基準に計上すべきかという
論点が明らかになったのです。(抗弁相手は統括官でした)
①出版の初版については請負契約
(執筆をしたことに対する対価)
②重版分については著作権の使用料
①と②の論点さえ納得できれば、さらなる反論は可能です。
税務調査において大事なのは、調査官の否認指摘の根拠を明確にすること。
当然ながら否認根拠は法令でなければなりません。
そのうえでないと、納税者側として反論できないにもかかわらず、
そもそもの否認根拠を明確にしないケースが多いのです。
逆にいえば、否認指摘の根拠さえ明確になれば、
それに対していかに反論するのか明確にすればいいだけなのです。
税務調査では、やり取りが非常に曖昧になりがちです。
否認根拠が曖昧な場合は、絶対に調査官に確認してください。
パッと聞けば合っていそうなことも、
実はまったく合ってないことがあるのです。
※2011年9月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。