商事債権の時効2年はウソ!?
※2016年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
全国4ヵ所でセミナーを開催しました。
その中で、私がもっとも強調したかったのが
調査官がよく言う「商事債権の時効は2年」
というのがウソだという話です。
貸倒損失を計上しているケースにおいて、
よくある否認指摘の文言は、
「この債権はすでに○年前に時効を迎えていますよね。
ですから、期ズレ(もしくは税務上の時効)です。」
でしょう。
この根拠になっているのが「商事債権の時効は2年」
という考え方なのですが、この2年というのは
どこから来た年数なのか、私には正直わかりません。
調査官がよく言う「商事債権の時効は2年」を
鵜呑みにしている税理士が多いようなのですが、
そもそも間違っています(可能性が高いです)。
債権の時効を民法・商法で整理すると、
原則としてこうなります。
一般の民事債権は時効=10年
(民法上の規定)
ただし、商取引によって生じた債権(商事債権)の場合は、
時効は原則5年とされています。(商法522条)
さらに、商事債権の中には【債権の種類によって】
5年よりも短い消滅時効も多く定められています。
これを「短期消滅時効」と呼んでいます。
例えば、技師、棟梁および請負人の工事に関する債権など
いわゆる工事請負代金は3年(民法170条)ですし、
生産者、卸売商、小売人の売却代金など、物の売買に
かかる売掛代金は2年(商法173条)となっています。
さらには、運送賃や飲食代金、動産賃貸借の賃料は
時効が1年(商法174条)とされています。
これはよく知られているところですが、
会社が従業員に対して払う給与(従業員からすると債権)
は、時効が2年と定められていますし、
(オフィス等の)家賃は時効5年となっています。
つまり、一言で「商事債権の時効は・・・」などと
一括りに年数が決まっているものではなく、
あくまでも債権の種類(発生原因)によって
時効の年数は違っているわけです。
では・・・意地悪をして、弁護士に
商事債権の種類ごとの時効年数を聞いてみてください。
実務上よく出てくるものは当然覚えているでしょうが、
すべての時効年数など言えるわけがありません。
なぜなら、時効年数の種類があまりに多いからです。
(覚える必要性などまったくなく、
一覧表で調べてみればわかるものです)
例えば・・・このような一覧です。
https://www.home-one.jp/kigyouhoumu/saiken/jikou.html
なぜか多くの調査官は「商事債権の時効は2年」
と言うのですが、そのような適当な否認指摘
(の根拠)は絶対に信じないでください。
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