国外転出時課税に関する住民税
※2023年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「国外転出時課税に関する住民税」です。
以前、「国外転出時課税の盲点」という
テーマで記事を書きました。
その際の盲点は、
1億円基準は相続税評価額(評基通)ではなく
所基通59ー6であるため、
推定相続人に非居住者がおり、
遺言が作成されていない場合には、
評基通だけでなく、所基通59ー6に基づく
評価をしておく必要性を解説しました。
改めて国外提出時課税制度の概要を確認します。
国外転出時課税制度は、
平成27年度税制改正において創設されました。
適用される場面としては、以下3パターンがあります。
(1)対象者が国外転出をする時
(2)対象者が国外に居住する親族等(非居住者)へ
対象資産の一部又は全部を贈与する時
(3)対象者が亡くなり、相続又は遺贈により
国外に居住する相続人又は受遺者が対象資産の
一部又は全部を取得する時
一般的に、
(1)国外転出時課税(所法60の2)
(2)国外転出(贈与)時課税(所法60の3)
(3)国外転出(相続)時課税(所法60の3)
と呼ばれています。
本日は、上記3パターンにおける
住民税の扱いを確認していきます。
(1)国外転出時課税(所法60の2)
本人が非居住者になるため、翌年1月1日の
賦課期日には居住者ではありません。
そのため、住民税が課税されることは
ないことは容易に理解できます。
(3)国外転出(相続)時課税(所法60の3)
被相続人の準確定申告が必要になりますが、
翌年1月1日の賦課期日の判定では既に相続発生しています。
そのため、被相続人に住民税が課税される
ことはないことは容易に理解できます。
(2)国外転出(贈与)時課税(所法60の3)
問題は、贈与時課税です。
贈与者本人は、翌年1月1日の賦課期日の判定では
居住者のままであるため、課税されるはずです。
しかしながら、以下の根拠条文により、
住民税は課税されないことになっています。
—(地方税法)
(所得割の課税標準)
第三十二条 所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。
2 前項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額は、この法律又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、それぞれ所得税法その他の所得税に関する法令の規定による所得税法第二十二条第二項又は第三項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算の例によつて算定するものとする。ただし、同法第六十条の二から第六十条の四までの規定の例によらないものとする。
(以下省略)
—
つまり・・・
地方税法32条2項ただし書きにて、
所得税法60条の3を準用しないため
住民税の課税はないことになります。
結果として、
国外転出時課税3パターン全て
住民税は課税されないことになります。
贈与時課税は盲点になりやすいため
注意が必要となります。
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