国税のスタンスと市街地価格指数による取得費の計算
※2018年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「国税のスタンスと市街地価格指数による取得費の計算」ですが、
複数の裁決をご紹介します。
不動産の譲渡に伴って譲渡所得の計算をする場合、
購入当時の売買契約書が無く、実際の取得費が不明であることがあります。
この場合、概算取得費(5%)を使ってもいいのですが、
市街地価格指数による推定計算も実務上は認められています。
これに関する通達などはありませんが、
下記裁決があり、市街地価格指数による計算は
ご存知である方も多いでしょう。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/60/19/index.html
当社でも普通に適用していますが、もめたケースは1度もありません。
ただし、市街地価格指数を使った計算であるにも関わらず、
税務調査でかなりもめたケースも中にはあります。
そこで、国税の市街地価格指数に対する「考え方」を
検証してみましょう。
国税速報第6400号(平成28年2月22日)を見てみましょう。
この中に下記の旨が記載されています。
〇取得費は実際の取得価額が原則。
〇売買書類等が無く、取得費がわからない場合でも、
軽率に市街地価格指数による推計計算を行う前にやることがある。
〇閉鎖登記簿等で前所有者の情報を入手し、前所有者に照会をかけるなどの
実際の取得費の把握に努めることが重要。
〇市街地価格指数による推定計算の妥当性は、十分な検討が必要。
別の国税OB税理士が講師の研修に出席した際も、
全く同じことを解説していました。
だから、「実際の取得費の解明に努めたこと」は
国税にとって「1つの」重要な要素なのかもしれません。
もちろん、努力という不確定概念によって、
適用の可否が分かれるのは合理的ではありませんし、
ここまでの照会をせずに、市街地価格指数による推定計算をし、
特に何の問題も発生していないケースが多いでしょう。
ただし、国税としては、こういう考え方があることも事実なので、
「1つの見解」として覚えておいてください。
なお、概算取得費で申告をしてしまった後、
市街地価格指数による更正の請求はできません。
非公開裁決ですが、平成26年3月4日のものがあります。
TAINSコードは「F0-1-589」です。
なぜ、更正の請求が認められないかというと、
概算取得費による計算は納税者不利ではあっても「合法」であり、
国税通則法23条に規定する「誤り」ではないからです。
ただし、実務上は更正の請求が認められているケースもあるようです。
ある税理士は「うちでは何件も出していますが、
更正の請求が『全部』認められてきました」と話していました。
具体的な件数は分かりませんが、こういうケースもあるので、
法律的にはNGでも、実際に認められてしまうことがあるのでしょう。
ここは単なる国税のミスですが、こういうこともあるのです。
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