国税庁の質疑応答事例は否認根拠?
今回のテーマは、『国税庁の質疑応答事例は否認根拠?』です。
今回のメルマガは、弊社の税務調査対策コンサルティングで
問題解決した実際の事例をご紹介します。
http://kachiel.jp/tax/consulting.html
※相談いただいた税理士には個人等が特定されない形での
公開を許可をいただいております
税務調査に入られたのは居酒屋を営む法人でした。
そこで否認指摘を受けたのは、テナントとして
入居している建物に行った内部造作の減価償却方法について。
この法人は内部造作を「建物附属設備」として
定率法で減価償却していましたが、
調査官は下記を根拠に「建物」だと主張してきました。
国税庁ホームページの質疑応答事例
「他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/04/10.htm
この質疑応答事例を読むと、すべての飲食店などが行った
内部造作が「建物」に認定されてしまい、
これをお読みの税理士の多くが驚くのではないでしょうか。
この相談を受けて、私の方で調査官の否認指摘に反論する
抗弁書を書かせていただきました。思った通り、
この抗弁書だけで税務署は否認指摘を引っ込めました。
さてそもそも論ですが、国税庁のホームページに記載されている
質疑応答事例をもってして否認根拠になるのでしょうか?
少し長くなりますが、抗弁書の冒頭部分のみ抜粋します。
① 否認指摘の根拠について
まず、税務調査における否認指摘の根拠が、
国税庁ホームページの記載内容であることに対する抗弁です。
国税庁ホームページの記載内容は、あくまでも国税庁独自の見解によるものであり、
納税者を拘束し得ません。国税庁が納税者を拘束できる文書を出しえるのであれば、
それは租税法律主義から大きく逸脱するものです。
よって否認指摘における根拠は、租税法律主義の原則に則り、
法令をもって行うべきです。法令における解釈論であれば、
当方も解釈にかかる余地をまず議論したいと考えております。
②注記について
また質疑応答事例の注記には、下記のように記載されております。
「この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、
必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、
納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、
この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。」
この注記にある通り、この質疑応答事例をもってして「単純に」
否認指摘をするという貴税務署調査官の見解については驚きを隠しえません。
③ 質疑応答事例の主旨について
また「他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法」を精読するに、
「他人の建物について行った内部造作」がそのまま「建物」に該当するわけではありません。
(理由)1には、「建物附属設備に該当するものを除き、~」と記載があり、
(理由)2には、「内部造作のうち建物附属設備に該当しないものについては、~」
と記載されている以上、この質疑応答事例の主旨はあくまで、
「他人の建物について行った内部造作は、建物附属設備に該当するものを除き建物」
ということを規定しているにすぎません。
もちろんこの後、「建物」と「建物附属設備」の
違いについて法的な根拠をもってきて、さらなる
主張を重ねているのですが・・・今回知っていただきたいのは
ホームページの記載など否認の根拠にならないという事実です。
よくセミナーなどではお話ししていますが、通達も
国税職員をしばるものであって、納税者をしばるものではありません。
よって否認根拠にするのはおかしいのです。
今回の案件は抗弁書を調査官と統括官に説明した次の日の
朝一番に、調査省略の連絡があったそうです。
いかがでしょうか?
調査官がいくらもっともらしい否認根拠を提示してきても、
それにロジカルに反論できれば早々に撤回するものなのです。
絶対に調査官の言いなりにならないでください。
※2011年4月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。