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2015.09.29

土地の売買契約解除による損失と更正の請求

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

前々回前回から3回に渡り、「過年度の処理、後発事象、前期損益修正損益、更正の請求(更正の申出)」について解説していますが、今回は3回目です。

さて、今回は「土地の売買契約解除による損失と更正の請求」で、

国税不服審判所の裁決(平成5年12月10日)です。

まずは、事案の概要(数字は概算)です。

○ 建売、土地売買業を営む同族会社A社

○ 昭和48年10月にA社はB社に山林、田26万平米を38億円で売却

○ 昭和53年9月に25万平米につき合意解除し、同日付で15億円で

  B社に再度売却

○ A社には20億円の損失が発生

○ 昭和53年9月の契約解除の結果、本件売買契約は遡及して効力を失い、これは国税通則法23条2項、同法施行令6条1項に定める「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によつて解除され、又は取り消されたこと※」に該当するとして、A社は更正の請求をした

○ 更正すべき理由がない旨の通知処分がされ、争いになった

※現行法とは条文が違いますが、後発的事由という観点から考えて

 頂ければと思います。

では、国税不服審判所の判断にいきましょう。

○ 国税通則法は第1条(目的)で「この法律は、国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め」と規定しているとおり、各国税に共通する手続きを中心にした一般法である

○ 同法第4条(他の国税に関する法律との関係)では「この法律に規定する事項で他の国税に関する法律に別段の定めがあるものは、その定めるところによる」と規定されている

○ 同法第23条第2項の規定も国税一般についての更正の請求の手続を包括的に規定したもの

○ 通則法第23条第2項に規定する後発的事由が発生しても、個々の税法の課税要件の実体規定に基づき、課税標準等の変動をどう処理すべきか、その内容を検討し判断すべきであり、後発的事由が同項に該当することのみをもって当然に更正の請求ができる訳ではない

○ 現行の法人税法は期間損益課税を前提としており、法人の各事業年度の所得金額の計算に関し、同法第22条第1項で「各事業年度の所得金額は当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額」と定め、同法第22条第4項の規定によれば、当該事業年度の益金である収益の額及び損金である費用・損失の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算すべきであるとされている

○ 一般に、法人の所得については、法人自体が継続企業であることから、継続性の原則に従い、一定の期間を単位としてその期間内に生じた収益と費用・損失を対応させて算定しているところであり、税法上、別段の定めがあるものを除き、収益及び費用・損失の額は、私法上の法律効果によることなく経済的に発生した時点で認識すべきものと解され、当期において生じた損失は、その発生事由が既往の事業年度に対応するものであつても、当期に生じた益金と対応させて会計処理することになり、この発生主義による期間損益計算が原則とされている

○ このような会計処理を前提とする法人税においては、後発的事由によって損失が生じたからといつて既往の事業年度にそ及してこれを修正すべきでなく、法人税法第22条の所定の事業年度の損金として計上されることになる

○ 本件契約解除に伴い生じた本件損失額は非経常的で多額なものであるが、昭和54年4月期において請求人の事業の継続性が実質上失われた状態※とはいえず、かつ、これが期間損益計算になじまないものとする特段の根拠も認められないことから、後発的事由による更正の請求の余地があるとする請求人の主張は当たらない

※ 請求人は債務超過ではあったが、解散又は清算等の状況ではなかった

○ 本件損失額は、法人税法第22条第4項の規定による一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、本件契約解除のあつた日の属する昭和54年4月期の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであるから、通則法第23条第2項の規定を適用し、昭和49年4月期にそ及して所得金額を減額修正すべきものではない

ということで、納税者が負けたのです。

税理士の感覚からすれば、当然と感じる側面もありますが、ここで注目して

頂きたいのが「本件損失額は非経常的で多額なものであるが(中略)請求人

の事業の継続性が実質上失われた状態とはいえず」という部分です。

逆に言えば、「事業の継続性が実質的に失われた状態」ならば、更正の請求も

認められる可能性もあると言えます。

実際、所得税法63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)では、

継続的な事業を廃止した後に必要経費が生じた場合には遡及できることに

なっています。

また、所得税法64条(資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の

所得計算の特例)でも後発的事由により所得が失われた場合には、

遡及できることになっています。

法人税においても欠損金の繰り戻し還付という制度があり、厳密な

期間損益計算のみが適用されている訳でもありませんし、法人税法に

後発的事由による更正の請求は認められないという規定がある訳でも

ありません。

この事例では納税者が負けましたが、後発的事由と更正の請求という論点から

覚えておいて頂きたいと思います。

なお、後発的事由による更正の請求については、下記の資料もあるので

ご参考になさってください。

http://www.sozeishiryokan.or.jp/award/019/017.html

また、3回に渡り、「過年度の処理、後発事象、前期損益修正損益、

更正の請求(更正の申出)」について扱いましたが、下記考え方もあるので、

併せてご参考になさってください。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/111020/pdf/all.pdf

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2013年9月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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