増差税額ゼロの修正申告はアリか?
※2018年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
6月も下旬になりました。
さすがにこの時期になると税務調査は、
すべて結了していることでしょう。
さて、税務調査において、増差税額がゼロの場合、
修正申告を提出しなければならないのでしょうか?
例えば、繰越欠損金があって、
増差所得は発生するが、税額に影響しない場合、
修正申告の提出が必要であることは理解できます。
これは、繰越欠損金の額が変われば、
将来の税額に影響するからです。
修正申告の要件は、国税通則法第19条第1項に
規定されていますが、簡単に書くと下記になります。
(1)税額に不足額があるとき
(2)純損失等の金額が過大であるとき
(3)還付税金の額が過大であるとき
(4)納付税額が無から有になるとき
上記の繰越欠損金が減るケースは、
(2)に該当することになりますので、
増差税額がゼロでも修正申告が必要であることは
法的にも規定されていることになります。
では、繰越欠損金がない場合で、
増差所得は発生するが増差税額が発生しない
場合は、どうなるのでしょうか?
法人で考えると、税額控除の金額の方が大きく、
結果として増差税額が発生しないケース、
個人で考えると、引ききれていない
所得控除があるケースなどが考えられます。
上記、通則法の規定にある通り、
「(1)税額に不足額があるとき」が
修正申告の要件ですから、増差所得があっても、
税額に異同がない場合は修正申告の提出要件を
満たしていないことがわかります。
しかし、実務上は税務調査において、
増差所得が発生すれば、増差税額がゼロでも
修正申告を提出することがほとんどだと思います。
これは、調査官が「調査事案を是認にしたくない
から増差税額ゼロでも修正申告で終わりたい」
という内情の問題でしょう。
さて、「増差税額がゼロなんだし、修正申告を
しても別に問題ないのでは?」と
思った方も多いことでしょう。
はい、確かに問題はないように思います。
むしろ、所得証明の金額が変わりますので、
修正申告を提出した方がいいケースもあります。
ただ1点だけ、問題が想定されます。
重加算税が絡む場合です。
調査で修正申告を提出するということは、
加算税は課されます。増差税額はゼロですから、
加算税も0円(少額免除の不徴収)です。
ただし、重加算税の場合は0円であっても
賦課履歴は残りますので、以後調査に
入られやすくなるなどのデメリットは生じます。
ですから、重加算税が課されるケースだけは、
「税額は発生しないのだから修正申告を
提出する法的要件から外れている。
結果として、申告是認だ」
と主張する必要があります。
もちろん、修正申告書を作成するのが
面倒な場合も、上記の主張があり得ます。
税務調査で増差税額がゼロの場合は、
修正申告する必要性はないことを理解したうえで
対応を考えるべきなのです。
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