売却後に敷延で開発されたら、広大地不可なのか?
※2015年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
さて、今回は「売却後に敷延で開発されたら、広大地不可なのか?」ですが、
平成16年6月28日の裁決を取り上げます(全部取消し)。
相続財産の中に広大地がある場合、下記評価方法により評価することになります。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/02/04.htm#a-24_4
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hyoka/4610.htm
ただし、面積だけを考えれば広大地に該当する土地でも、マンション適地や
敷地延長(敷延、いわゆる旗竿地)で開発することが合理的である場合は
広大地としての評価は認められません。
もちろん、土地の評価は「相続開始日時点の現況」により判断しますので、
その後、当該土地にマンションが建設されたりしても、「相続開始日時点の
現況」においては、広大地と判断することが合理的であれば、広大地としての
評価となります。
実際、上記裁決では、広大地として評価した土地の一部が売却後に敷延で
開発され、原処分庁から「広大地は不可」とされたものの、納税者の主張が
認められた事案です。
なお、本件土地は市街化区域内の第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、
容積率200%)、普通住宅地区に存する土地です。
相続人は、本件土地のうち、■■市■■■■丁目■番■、同番■及び同番■
の土地670.52平方メートルを売却したという状況です。
(本件土地の内訳、いずれも雑種地)
①■■市■■■■丁目■番■、同番■、同番■及び同番■:1,023.06平方米
②■■市■■■■丁目■番■:147.28平方米
この前提の中、国税不服審判所は下記と判断しました。
○本件土地は、JR■■■線■■■駅の北東方約900mに位置し、北西側
及び南東側がいずれも幅員約6mの公道に接面し、この二つの公道に挟まれ
た間口24.10m、奥行55.70mの不整形な土地であること。
○本件土地は、本件相続開始日現在駐車場として利用されていたこと。
○本件土地の所在地周辺は、主に1画地が100平方メートル程度の戸建住宅
を中心に、マンション、倉庫、作業場等が混在する住宅地域であるが、平成
9年2月以降はマンションの新築はないこと。
○相続税の課税財産の価額は、相続税法第22条により、当該財産の取得の時
における時価によることとされており、当該時価を評価通達の定めに従い
評価することは、納税者間の租税負担の公平等の見地から合理的であると
解されている。
○ところで、評価通達24-4は、上記1の(3)のロのとおり定めているが、
これは、その地域における標準的な宅地の地積に比して広大な土地の開発
行為を行う場合、道路や公園等の公共公益的施設用地としてかなりの潰れ地
が生ずることが考えられるから、財産評価上、これを考慮する必要があると
いう趣旨のものと解される。
○また、都市計画法第29条及び同法施行令第19条は、開発行為を行うに
当たって開発許可を必要とする面積基準を定めているが、これは秩序ある
街づくりを目的とした整備のため、開発地区内に道路等の公共公益的施設が
必要となる場合の多いことから、基準以上の規模の開発行為を規制の対象と
するという趣旨のものと解される。
○そうすると、開発許可を必要とする面積基準以上の土地について、その土地
の価額を評価通達24-4の定めに従って評価することは、当審判所におい
ても、相当と認められる。
○一方、評価通達24-4に定める広大地の評価の趣旨が上記ロのとおりで
ある以上、評価すべき土地の地積が広大であっても、周囲の状況等からみて
明らかにマンション用地として適している土地や道路に面して間口が広く
奥行が短い土地のように、明らかに公共公益的施設用地としての潰れ地が
生じないと認められる土地については、同通達を適用して評価することは、
合理性を欠くものといわざるを得ない。
○これを本件についてみると、本件土地は、上記1の(4)のハのとおり開発
行為を行うとした場合には開発許可を必要とする土地であり、また、上記1
の(4)のロ及び上記(1)の各認定事実によれば、上記ハで述べた明らか
に潰れ地が生じない土地には該当しないから、本件土地の価額を算定するに
ついて、評価通達24-4を適用することは、合理的と認められる。
○この点に関し、原処分庁は、本件土地は公共公益的施設用地の負担がない
旗状の宅地による開発が可能であり、また、現に、本件土地の一部である
本件売却土地は、旗状の宅地による開発がされているから、本件土地を
評価するにつき評価通達24-4を適用することはできない旨主張する。
○しかしながら、本件土地は、上記(1)のイの認定事実によれば、公道から
の奥行が長い土地であるから、仮に、本件土地を原処分庁が主張するような
旗状の宅地として開発する場合、公道から離れた画地については、公共公益
的施設としての道路に代えて、公道に通ずるための通路が必要となる。
○そして、この通路部分は、通路として用途が限定されることとなり、また、
旗状に画地を分けることにより、本件土地内に不整形な画地を生み出すこと
となるから、このような開発は、公共公益的施設としての道路を設ける
開発と同様に、本件土地の評価額を低下させる要因となることが認められる。
○そうすると、このような事情を考慮した場合、本件土地を評価通達24-4
の定めに従って評価することは、必ずしも不合理であるとはいえない。
○また、相続税法第22条が、上記1の(3)のイのとおり規定していること
からすれば、相続財産の価額は、相続開始の時における財産の現況に応じて
評価すべきであるから、原処分庁の主張するように、相続開始後の財産の
状況をもって評価方法の適否を判断することは、相当でない。
○したがって、これらの点に関する原処分庁の主張には、理由がない。
○一方、請求人らは、本件土地の開発行為を行うとした場合、本件土地内に
255.98平方メートルの道路用地を確保する必要があるから、評価通達
24-4に定める有効宅地化率を0.78として本件土地を評価すべきで
ある旨主張し、その根拠として平成14年7月12日付株式会社■■作成の
土地利用計画図を原処分庁に提出している。
○そこで、当審判所において、本件土地の現地確認を行った上で、この土地
利用計画図等を基に検討したところ、請求人らの主張する開発の方法は
相当と認められたので、請求人ら主張の有効宅地化率を適用して本件土地
の価額を算定すると、その額は、別表3の「請求人ら主張額」欄記載の
金額と同額となる。
現実問題としては、広大地として評価した土地が売却され、結果として、
マンションが建設されたり、敷延で区割りされたりすると、広大地の評価は
相当危うくなることは事実です。
そのため、広大地として評価をした土地を売却するならば、マンション業者や
敷延を前提にした開発をする戸建業者は避けるべきでしょう。
ただし、「マンションが建った、敷延で開発された=広大地ではない」と
いうことにはならないので、上記裁決を覚えておいて頂ければと思います。
なお、マンション適地かどうかは時代によっても変わります。
バブルの当時であれば、マンション業者が買った土地(例えば、駅から徒歩
15分等の土地)でも、現時点では、戸建業者しか買わない土地もあります。
開発の状況によっては、敷延開発も同様のことが言えます。
ある時代は広大地に該当しない状況でも、別の時代には広大地に該当する
こともあるのです。
そのため、第一次相続では広大地としての評価ができなかった土地でも、
第二次相続では広大地として評価をする(できるではない)場合もあります
ので、注意が必要です。
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