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2015.09.03

売掛金の過入金と重加算税

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「売掛金の過入金と重加算税」です。

税務調査があり、「売上計上すべき入金」が「売掛金の過入金」として

処理されていた場合、これは重加算税の対象になるものでしょうか?

今回の事例は平成12年11月15日の裁決で、

TAINSコードは J60-1-16 です。

まずは、この事案の前提条件です。

○ 請求人は鋼製建具(ドア)の製造販売と取付工事を行なう会社

○ 対象事業年度は平成9年4月1日~平成10年3月31日

○ 当初の契約金額は3,800万円で、最終的な請求金額は4,450万円

○ 差額の650万円は売掛金の過入金として処理された

○ 650万円は翌期に下記日時にて売上計上

・ 平成10年7月30日・・・813,000円

・ 平成10年11月7日・・・2,913,600円

・ 平成11年3月31日・・・残額

→ これは「仕入の支払いをする場合、仕入に見合う売上がなければならない」

  とする社内ルールにより、本件過入金の売上処理を仕入の発生に合わせた

→ 税務調査時において、上記の残額部分は売上計上されていない

→ 原処分庁はこれらの売上に対応する原価が別の工事のものであり、

  仮装していると主張

○ これに関する修正申告書は提出済み

○ 重加算税の対象になるかどうかが争点

この前提の中、国税審判所は下記と判断しました。

○ 過入金による売上計上漏れが国税通則法第68条第1項に規定する

  課税標準の基礎となるべき事実の仮装、隠ぺいに当たるとまでは

  認められない

○ 請求人が翌期に行った処理(売上、仕入)は所得金額の増減に影響が

  なく、仮装しているという原処分庁の主張には理由がない

○ 原処分庁は請求人の行った原価の付け替えが利益調整のための仮装行為

  と主張するが、それを裏付ける事実は認められない

○ 重加算税ではなく、過少申告加算税の対象となる

当然ですが、重加算税の対象となるのは隠ぺい、仮装が前提であり、

他の裁決文でも繰り返し使われていますが、この隠ぺい、仮装とは

下記とされています。

「事実を隠ぺいするとは、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠匿し

あるいは故意に脱漏することをいい、事実を仮装するとは、所得、財産

あるいは取引上の名義等に関し、それが事実であるかのように装う等、

故意に事実をわい曲することをいうものとされている。」

ちなみに、国税職員が守るべき事務運営指針(法人税の重加算税の取扱いに

ついて)には下記記載もあります。

(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合) 

売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が

翌事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、

翌連結事業年度。)の収益に計上されていることが確認されたとき。

いかがでしょうか?

この事案の税務調査当時にはこの指針はまだ発表されていませんでしたが、

隠ぺい、仮装の考え方が発表により異なった訳ではありません。

私自身も税務調査に立ち会っていて、単なる科目の間違いを「仮装」だとし、

重加算税の指摘を受けたことは何度もありますが、実際に課されたことは

1度もありません。

税務調査があれば、調査官は重加算税の対象になるものを探します。

結果、重加算税の対象でないのに重加算税と指摘してくることがありますが、

それは間違っています。

もし、今回の事例と似たもので指摘を受けたなら、

この裁決を提示し、しっかりと反論していきましょう。

重加算税でないものに重加算税を課される必要はないのです。

 

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2013年7月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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