外注費と給与の区分・判定基準(1)
※2019年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
源泉徴収義務の範囲を考えるうえで、実務上
外せない論点として「外注費か給与か」があります。
外注費か給与かを判定するうえで非常に難しいのは、
違った立場・観点が混在しているからです。
金銭の授受という観点で考えれば、
支払った側:外注費か給与か(源泉・消費税)
受け取った側:事業所得か給与所得か
となりますし、法律上の契約形態で考えると、
雇用契約:給与
請負契約:外注費
委任契約:明確になりづらい
と考えることもできます。これらも契約書の
タイトルだけで判断できるわけでもなく、また
契約書がない場合でも実態で判定することになります。
また、職業上の捉え方というのも存在します。
よくあるのが、医者・士業・保険外交員・
プロスポーツ選手・一人親方などが挙げられます。
これらをまとめて解説することは不可能ですので、
今回から複数回にわたって、外注費か給与かの
区分・判定基準を多面的に解説していきます。
さて、今回は判定基準として実務上もっとも
採用される消費税の通達を取り上げます。
消費税法基本通達1-1-1
(個人事業者と給与所得者の区分)
事業者とは自己の計算において独立して事業を
行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに
準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、
当該他の者の計算により行われる事業に役務を
提供する場合は、事業に該当しないのであるから
留意する。したがって、出来高払の給与を
対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、
請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に
該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が
出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの
区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に
基づく対価であるかどうかによるのであるから
留意する。この場合において、その区分が
明らかでないときは、例えば、次の事項を
総合勘案して判定するものとする。
(1)その契約に係る役務の提供の内容が
他人の代替を容れるかどうか。
(2)役務の提供に当たり事業者の指揮監督を
受けるかどうか。
(3)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため
滅失した場合等においても、当該個人が
権利として既に提供した役務に係る報酬の請求を
なすことができるかどうか。
(4)役務の提供に係る材料又は用具等を
供与されているかどうか。
本通達の(1)~(4)をあえて分解して解説すると、
【1】代替性の有無
・他の人・会社に替えることができる:報酬
・できない:給与
【2】指揮監督の有無
・指揮監督を受けない:報酬
・指揮監督を受ける:給与
【3】報酬請求権の有無
・完成品を引渡さないと請求できない:報酬
・請求できる:給与
【4】材料提供者
・材料の提供を受けていない:報酬
・受けている:給与
【5】作業用具提供者
・作業用具の提供を受けていない:報酬
・受けている:給与
これらはあくまでも1つ1つが総合勘案としての
判定要素となりますが、通達に明記されており、
また判決・裁決でも判定基準として採用されて
いますので、まずこの判定要素から
外注費(報酬)か給与かを考えることになります。
来週金曜の本メルマガでは、上記を
ふまえたうえで、さらに考えるべき
判定基準について解説していきます。
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