外部からもうかがい得る特段の行動
※2015年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
今年は特に調査の開始時期が早くなっているようで、
8月上旬にもかかわらず、調査の相談が多いです。
もう税務調査の最盛期ですね。
調査でもっとも困るポイントが「重加算税」。
重加算税については、本メルマガでも何度も
お伝えしているところですが、最近の判決・裁決等を
調べてみると、重加算税の判断基準を
「外部からもうかがい得る特段の行動」
にしているものが多くあります。
これは最近の傾向といえるでしょう。
もちろん、重加算税の法的要件は「隠ぺいまたは仮装」
なのですが、では何を持ってこれに該当するのか、
その基準を「外部からもうかがい得る特段の行動」
として判断するというものです。
私はよく、東京国税局課税第一部国税訟務官室が
国税内部に出している「判決速報」を確認します。
なぜなら、あまたある判決の中で、わざわざ調査官が
参考にすべき判決をピックアップしているのですから、
調査を受ける側にも参考になると考えているからです。
※「判例速報」はTAINSで閲覧可能です
最新の判例速報にある「平成27年2月24日判決」
(TAINSコード:判決速報1330)
では、不動産所得者が5~6,000万円もの
所得を申告していなかったとして、重加算税が
争われた事案として紹介されています。
(判決内容の詳細は不開示)
この判決(国税側勝訴)における国税内の解説では、
「納税者が当初から所得を過少に申告することを意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動が
認められる場合には、重加算税の賦課要件が充足する。」
としています。
この判決は国税が勝っている事案ですが、
同じ判断基準で納税者が勝っている裁決があります。
「積極的な隠ぺい、仮装行為も租税負担を免れる意図を
外部からもうかがい得る特段の行動も認められないため、
重加算税の賦課要件を満たさないとした事例」
(平成24年2月22日公開裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/86/05/index.html
さらに最近の裁決でも、非常に興味深い
事案が公開されています。
「請求人が、法定申告期限までに相続税の申告書を
提出しなかったことについて、国税通則法
第68条第2項の重加算税の賦課要件を
満たしているとはいえないとした事例」
(平成26年4月17日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/95/03/index.html
税務調査において、調査官と「何が仮装」で
「どこまでが隠ぺい」なのかを言い争う場面
もあるかと思いますが、1つの判断基準として、
「外部からもうかがい得る特段の行動などは
していないから、重加算税ではない!」
というのも強い主張・反論材料になるということです。
「仮装」「隠ぺい」というのは、ある程度ザックリ
した言葉で、その意味合いや範囲を問われる場面では、
ぜひ知っておいていただきたい基準です。
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