多額の借入金の保証人であることは功労金の対象なのか?
※2018年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「多額の借入金の保証人であることは功労金の対象なのか?」です。
事業承継税制が拡充され、
ここ10年間は団塊の世代の社長、役員の退職が多くなる時代です。
当然、退職に伴う役員退職給与という論点が出てくるのですが、
長年、同族会社の借入れに伴う連帯保証人になっていた場合は
どのように評価されるのでしょうか?
長年、個人財産が保証のリスクに晒されていた訳ですが、
これは功労金加算の対象になるのでしょうか?
実際、これは私がセミナー講師を務めると、
質疑応答の時間に間々出るご質問です。
結果は「NO」です。
なぜならば、功労金は既に功績倍率に含まれている考え方
となるからです。(大分地裁、平成21年2月26日)。
功績倍率を乗じた上で功労金加算ができる場合は、
「極めて特殊な事情」がある場合に限られるのです。
「極めて特殊」ということは、「非常に珍しい」ということです。
これにつき、争われたのが東京地裁(平成25年3月22日)です。
ちなみに、この事例は精神疾患から代表取締役が自殺した事例です。
原告(納税者)は下記と主張しました。
〇 亡乙は、上記業務や巨額の個人保証等による過度の負担により、
うつ病に罹患し、その治療中に自殺したものであって、
その精神的不調及び死亡と原告における業務等との間に
因果関係があることは明らかである。
〇 このような亡乙の原告に対する貢献度その他の特殊事情を
考慮すれば、その退職慰労金には相当程度の功労加算が
認められるべきであるところ、退職慰労金の加算制度を
採用している会社における加算金支給率は、基本慰労金の
30パーセント以内としている会社が最も多いことからすれば、
本件役員退職給与適正額を算定するに当たっても
これを基礎とすべきである。
しかし、東京地裁は下記と判断し、原告の主張を認めませんでした。
重要な部分に【 】を付けます。
金融機関が法人に対して融資を行うに当たっては、
その是非は別として、代表取締役等の役員を保証人とすることを条件と
することが【広く一般的に行われており】、殊に、原告のような
同族会社においては、代表取締役やその親族である取締役等の役員を
保証人とすることも【珍しくない】ことは公知の事実であり、
しかも、原告の借入金債務の弁済が滞り、亡乙が保証債務を履行するに
至ったことはないと認められることを併せ考えれば、
亡乙が金融機関との間で、原告の借入金債務について、
包括的に連帯保証する旨の契約を締結していたことをもって、
同業類似法人の抽出が合理的に行われてもなお、
同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として
把握されたとはいい難いほどの【極めて特殊な事情】があるとは
認められない。
東京地裁の主張はもっともなものです。
現在は「経営者保証に関するガイドライン」が発表され、
経営者保証が外れているケースも多くなりました。
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/
しかし、まだまだ中小企業の役員は個人財産をリスクに晒して、
同族会社が借入れをしていることも事実です。
ただし、これは功労金加算の対象にはならないのです。
お客様からこれに関して質問をされたら、
是非、この事例を提示して頂き、
このことを説明して頂ければと思います。
しかし、お客様としては「もらいたい役員退職金の額」が
あったりもします。
そういう場合は最終報酬月額(税務上の適正額という制限は
ありますが)を上げ、その額に達するようにすることが
一番安全な方法なのです。
当然ですが、功績倍率を異常に高率にすれば、
これも税務調査で否認されることになりますので・・・。
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