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2017.03.07

契約社員の退職に伴う慰労金は何所得?(その2)

※2016年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「契約社員の退職に伴う慰労金は何所得?(その2)」ですが、

最高裁判決(平成4年2月18日)を取り上げます。

さて、前回は下記内容を解説しました。

〇 契約社員が契約満了時に「慰労金」を支給された

〇 この慰労金につき、会社は給与所得として源泉徴収

〇 契約社員は退職所得として確定申告したが、給与所得として更正された

〇 審判所で退職所得として認められ、原処分が全部取消しとなった

ただし、本裁決は最高裁判決(平成4年2月18日)から考えると、

大きな問題を残しています。

なぜならば、所得税法上、源泉徴収税額の過不足があった場合、

〇 国 ⇔ 源泉徴収義務者

〇 源泉徴収義務者 ⇔ 納税者

という間で「のみ」精算することになっているからです。

だから、源泉徴収税額に過不足があった場合、

国と納税者の間での直接精算ということは税法上、あり得ないのです。

実際、上記最高裁判決の第一審(名古屋地裁、平成元年10月20日)でも

下記と判示しています。

〇 確定申告を行おうとする受給者が、先に源泉徴収による所得税を

  不当又は過大に徴収されている場合であつても、正当な源泉徴収税額

  との差額の金員の還付を求めることができるのは支払者のみである。

〇 当該受給者は、支払者に対して当該差額に相当する部分の給付を

  求めることができるのは格別、確定申告に際して国に対して直接

  その還付を求めることができないことは明らかである。

そして、名古屋高裁も第一審同様、下記と判示しました。

〇 原判決が説示するとおり、源泉徴収の場面における課税権者たる国と

  徴収義務者たる支払者との間の法律関係と、申告納税の場面における

  国と申告者たる受給者との間の法律関係とは全く異なるものというべき。

最後に、最高裁判決の一部を載せます。

〇 その受給者が、右確定申告の手続において、支払者が誤つて徴収した

  金額を算出所得税額から控除し又は右誤徴収額の全部若しくは一部の

  還付を受けることはできないものと解するのが相当である。

〇 受給者は、何ら特別の手続を経ることを要せず直ちに支払者に対し、

  本来の債務の一部不履行を理由として、誤つて徴収される金額の支払を

  直接に請求することができる(最高裁、昭和45年12月24日)。

〇 源泉所得税と申告所得税との各租税債務の間には同一性がなく、

  源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者のみで、

  受給者との間には直接の法律関係を生じないものとされていることから

  すれば、前記源泉徴収税額の控除の規定は、申告により納付すべき

  税額の計算に当たり、算出所得税額から右源泉徴収の規定に基づき

  徴収すべきものとされている所得税の額を控除することとし、

  これにより源泉徴収制度との調整を図る趣旨のものと解されるのであり、 

  右税額の計算に当たり、源泉所得税の徴収・納付における過不足の

  清算を行うことは、所得税法の予定するところではない。

いかがでしょうか?

 

前回、今回と取り上げた裁決については、国税速報(6425号)の中でも

税理士の冨永賢一先生が「本裁決は〜平成4年最高裁判決で示されている

判例が考慮の外に置かれ、現行法令の規定に反する処理を認めているので、

影響は少なくないものと考える。」と解説されています。

ちなみに、冨永賢一先生は源泉所得税に関する著書も多く、

元国税の川田剛先生に「著者は、長年にわたり国税庁で源泉及び国際源泉の

専門家として数多くの通達立案及び事務処理に当たってこられた。」と

紹介された方です(出典:平成26年4月14日、「税のしるべ」)。

源泉所得税の過不足の精算は国と納税者の間で直接的に行なうものでは

ありません。

皆さんのお客様が源泉徴収義務者なのか?納税者なのか?は

ケースバイケースですが、過不足がある場合は法令に従った処理を

することが必要なのです。

 

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