寄付金に該当する条件とは?
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
さて、今回は「同族会社間の取引と寄附金」です。
税務調査において、同族会社間の取引が寄附金に該当すると否認指摘を受けることがあります。
この指摘を受けた場合の反論材料として、参考になる判決をご紹介します。
具体的には、東京地裁(平成26年1月24日)ですが、全部取消しとなり、納税者勝訴で確定しています。
まずは、前提条件です。
〇 A社(原告)は、B社の住宅用外壁材の製造部門を分社化して設立された
→ A社はB社の100%子会社
〇 A社B社の取引価格を定めた覚書があり、下記とされている
・ B社がA社より購入する「外壁部材」の価格は、原則として、合理的な原価計算の基礎に立ち、B社・A社協議の上決定する。
・ B社の発注量の大幅な増減、経済事情の著しい変動が生じた場合は、B社・A社協議の上、購入価格を決定出来るものとする。
→ A社は「期初に設定された取引価格は暫定的な価格であり、A社のB社に対する販売価格は期末に決定されるものである」と主張
〇 売上値引き、単価変更による売上げの減額が寄附金に該当するとして、更正され、重加算税の賦課決定もされた
〇 争点は売上値引き、本件単価変更に係る金額が寄附金に該当するか?
ですが、具体的には、下記となります。
・ 本件各事業年度におけるA社B社間で合意されたとみるべき契約価格は当初取引価格か、期末決定価格か。
・ 売上値引き、本件単価変更は単にA社の利益をB社に付け替えるだけのものであって、通常の経済取引として是認できる経済的な合理性を有しないものか否か。
そして、東京地裁は下記と判示しました。
〇 本件販売契約における契約価格、すなわち「合理的な原価計算の基礎に立ち、A社とB社間で協議の上決定した価格」は、各半期における期末決定価格又は期中決定価格であると認められる。
〇 以上と異なり、本件販売契約において合意された契約価格を当初取引価格と認めた上、その後に債権放棄又は取引価格変更合意があったと認めるべきとする被告の主張は、真実の法律関係から離れて法律関係を構成するものであり、採用することができない。
〇 本件販売契約において合意されたとみるべき外壁の契約価格は、各半期における期末決定価格又は期中決定価格であるから、その余の点について判断するまでもなく、本件売上値引き及び本件単価変更により、A社からB社に対し、経済的にみて贈与と同視し得る資産の譲渡又は利益の供与がされたとは認められないから、本件売上値引き及び本件単価変更に係る金額は法人税法37条7項の寄附金に該当しない。
〇 法人税法37条8項は、内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとすると定めている。
〇 本件において、被告は、同項に基づく主張はしておらず、また、A社とB社間の外壁の取引価格と、外壁の市場価格との差額の存在及び額を認めるべき証拠はないから、本件売上値引き及び本件単価変更に係る金額は37条8項の寄附金に当たるとはいえない。
このように判示し、更正処分、重加算税の賦課決定処分は取り消されたのです。
寄附金の考え方は上記条文でも示されている通り、「その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いとき」が前提です。
あくまでも、寄附金に該当するには「時価との乖離」が条件なのです。
だから、この否認指摘がされた場合は
「では、時価はいくらなのですか?」
と聞いてみればいいのです。
時価がいくらかすら言えない状況では、乖離していることを言える訳がありません。
また、以前に聞いた事案ですが、同族会社間取引の単価変更を13か月目の仕訳1本(1年分の変更総額)で入力し、問題になったケースがありますが、
これも「では、時価とはいくらなのですか?」という反論が通ったそうです。
また、私が立ち会った税務調査の事例ですが、ある事情により、支払い方がいびつというか、不定期になっていた事例があります。
この場合も支払い方が不自然なので、調査官は寄附金という否認指摘をしてきましたが、税法には「支払い方が不自然だと寄附金に該当」とは、どこにも書いていないのです。
だから、私は「税法にはあくまでも時価との乖離が寄附金と書いてあります。
だから、支払い方がどうであれ、それは寄附金の要件には該当しません。」と主張し、この否認指摘を止めました。
いかがでしょうか?
当然ですが、税務調査官は否認をすることが仕事なので、条文をきちんと読まず、とりあえずのイメージで否認指摘をしてくることもあります。
しかし、「条文にはどう書いてあるのか?」というところに立ち返れば、
自ずと答えが見えてくることはよくあるのです。
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※2014年4月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。