審判所で勝ってもまた更正される?
※2016年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
税務調査で否認指摘に納得がいかず、
最終的に(増額)更正されることがあります。
このような場合で、あえて不服申立てをしない
理由として、よくあるのが、
「時間と労力(と付随してお金)がかかる」
というものがあります。不服申立ては行政救済なので
訴訟と相違して行政費用は発生しませんが、代理人
(税理士や弁護士)にかかる費用は生じてしまいます。
(代理人を入れないなら金銭負担はありません)
この判断は致し方ない理由なのですが・・・
不服申立てをしない理由に、「不服審判所で勝っても
また税務署から更正されるなら意味がない」
と勘違いしている方も多いようです。
これは、不服申立てをすると国税と争うことになるから、
国税側から反感をかう、と思い込んでいる一例でしょう。
(もっといえば、国税は感情論で動くと
思い込んでいる一例でもあります)
結論からお伝えすると、裁決で勝てば
(同じ根拠・理由で)再更正されることはありません。
不服審判所の判断(結論)である裁決には
「拘束力」があり、行政部内の最終判断なのです。
国税通則法第102条(裁決の拘束力)
裁決は、関係行政庁を拘束する。
2 申請若しくは請求に基づいてした処分が手続の違法
若しくは不当を理由として裁決で取り消され、又は申請
若しくは請求を却下し若しくは棄却した処分が裁決で
取り消されたときは、当該処分に係る行政機関の長は、
裁決の趣旨に従い、あらためて申請又は請求に対する
処分をしなければならない。
裁決で納税者が勝てば、その争った更正処分が
取り消されるのは当然のこととして、取消処分後、
税務署は同じ理由で(再)更正できません。
国税不服審判所のサイトにも明記されています。
「裁決の拘束力とは?」
http://www.kfs.go.jp/system/faq/44.html
もちろんこれには条件があって、
取り消された更正処分と同じ状況・理由である
ことが前提で、別途違う状況・理由が発生すれば
再更正される可能性はあります。
実際の公開裁決事例でも下記があります。
「二次相続に係る本件更正処分は、一次相続に
係る裁決における取消し理由と同じ理由で
行なわれたものではなく、また、一次相続に
係る処分とは別個の二次相続に係る処分で
あるから違法ではないとした事例」
http://www.kfs.go.jp/service/JP/67/09/index.html
しかし、常識的に考えて通常の場合、更正をされた
当時と違う状況が発生するとは考えにくく、
ほとんどのケースでは再更正になることはありません。
国税側も、上記の拘束力についてはわかっているため、
(感情論で?)再度調査をすることも通常ありません。
不服審判所は国税庁の一組織であるわけですが、
拘束力という意味では、行政救済の制度が
きちんと担保されているというわけです。
この点をきちんと理解したうえで、
不服申立てをするかしないか判断してください。
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