市街地価格指数適用替えの更正の請求はできない
※2017年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
先日、税務特化型不動産鑑定(株)主催の会員限定セミナーで、
「譲渡所得課税をめぐる費用認定と税務判断」(清文社)の
著者であり、元税務署長まで歴任された山形富夫税理士に
講師をしていただきました。
※会員限定の無料セミナーは年2回開催しております。
さて、このセミナーの中で力を入れて解説してもらったのは
取得費不明の場合に「市街地価格指数」を使用すること。
一般的には、不動産の取得費が不明の場合に
5%を適用することが多いと思いますが、
市街地価格指数で算出した方が、納税者有利
=納税額の減少になることが多々あります。
特に、バブル期など不動産価格が高騰していた
時代に不動産を購入していた場合は、
5%と市街地価格指数の差は相当な額になります。
市街地価格指数の適用については、
過去の裁決事例でも認められているものです。
平12.11.16裁決、裁決事例集No.60 208頁
http://www.kfs.go.jp/service/JP/60/19/index.html
不服審判所の判断文を一部転載しておきます。
「取得時期は判明しているが取得価額を直接証する契約書等の資料
(請求人提出の資料で採用できないものも含む。)の提出がなく、
その額が不明なものについては、その費用を実額により
算定することができないから、その部分については、
推計の方法によって算定せざるをえない。 そして、
このような場合の土地・建物の取得費については、
前記2の(2)のイの(イ)での原処分庁主張のとおり、
各種の計算方法が考えられるところ、原処分庁が採用した
計算方法は、本件新建物の取得費については、調査会が
公表している統計的な数値である建築物単価を基に建築価格を
算定し、その価額から譲渡時までの減価償却費相当額を
控除しているものであり、実勢価額の近似値と認められる
時価相当額を推定していること、また、本件宅地の
取得費については、本件物件の譲渡価額の総額から
実勢価額の近似値と認められる当該建物の取得費を
差し引いた額に、Mが調査し公表している六大都市を除く
市街地価格指数(住宅地)の譲渡時に対する取得時の
当該価格指数の割合を乗じて時価相当額を推定している
ことから、いずれも合理性があり、当審判所においても、
これを不相当とする理由は認められない。」
では、すでに5%で申告をしたものを、
このメルマガで市街地価格指数を知ったので、
更正の請求ができるか?という論点があります。
結論は・・・「更正の請求はできません」。
なぜなら、更正の請求は当初申告から税額が
減ることだけが要件なのではなく、下記の
どちらかの要件を満たさなければならないからです。
(国税通則法第23条第1項第一号)
法律の規定に従っていなかった
or
計算に誤りがあった
取得費不明の場合に、5%で申告したことは
法律誤りでも計算誤りでもありません。
あくまでも、取得費不明の場合に5%を用いたことは
正しい方法であって、一方で市街地価格指数を
用いることも、正しい方法というわけです。
正しい方法(選択肢)が複数ある、というのは
税務の世界ではよくあることですが、
いったん採用した正しい方法から、別の
正しい方法への変更による更正の請求は
できない、というわけです。
だからこそ、取得費不明の場合には、
安易に5%を用いるのではなく、市街地価格指数を
含めた(合理的な)推計方法をしっかり
検討してから申告をする必要があるのです。
いったん申告してしまうと取り返しが
つかないケースです。十分注意してください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。