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2016.06.07

建替中の賃貸建物と貸家建付地評価

※2015年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「建替中の賃貸建物と貸家建付地評価」ですが、

平成4年12月9日の裁決を取り上げます。

まずは、本事案の前提条件です。

○昭和63年6月:旧賃貸建物(以下、「旧建物」という)の取壊し完了

○昭和63年6月:新賃貸建物(以下、「新建物」という)の建設着手

○平成元年1月31日:相続開始(被相続人は妻、新賃貸建物は建築中)

○平成元年5月11日:新建物が完成引渡し

○新建物の建築を請け負ったA社は旧建物の賃借人でもあり、新建物にも

 引き続き、入居している

○A社以外の賃借人は入れ替わっている

この前提の中、原処分庁は「A社賃貸部分以外の部分については貸家建付地

とは認められない」として更正をしたのでした(A社賃貸部分については、

そもそも貸家建付地として認めているということです)。

ちなみに、本件は「当初申告→更正の請求→更正→修正申告→更正」という

珍しい事案です。

そして、国税不服審判所は下記と判断したのでした。

○被相続人は、旧建物の賃借人のうちA社を除くB男ほか6名と賃貸借契約の

解除に係る合意書を作成しており、当該合意書によれば、返還する敷金の金額

及び立退料の支払金額等は次表(割愛)のとおりであり、旧建物の賃借人との

賃貸借契約は、昭和63年3月31日に終了していると認められること。

○本件相続の開始日現在においては、被相続人は本件宅地の上に新建物を

建築中であって、この時点では新建物の賃貸借契約は締結されておらず、

平成元年4月以降に請求人らは、順次新建物の賃借人との賃貸借契約の締結を

していること及びA社を除き、旧建物の賃借人は請求人らと新建物に係る

賃貸借契約を締結していないこと。

○平成元年5月に新建物が完成し、平成元年8月9日に新建物に係る所有権保存

の登記がなされていること。

○新建物の地上6階部分132.40平方メートルはC男及び請求人が使用し、

地下1階部分196.53平方メートルはA社に賃貸され、その他の部分は第三者に

賃貸されていること。

○相続税法第22条《評価の原則》によれば、相続により取得した財産の価額は、

その取得の時における時価によると規定されているところ、評価基本通達26に

定める貸家建付地とは貸家の目的に供されている宅地をいうから、貸家建付地

とは相続開始の時において現に貸付けの用に供されている建物の敷地を指す

ものと解するのが相当である。

○評価基本通達では、貸家建付地は自用地に比べて低額に評価することと

されているが、これは、建物の賃借人はその借りている建物の敷地に対して

借地権等の権利を有しているわけではないが、借りている建物の利用の範囲内

でその敷地に対しても事実上の支配権を有していることから、敷地の所有者に

とっては、その分その敷地の経済的な価値がこれらの目的となっていない

自用地に比べて低くなっていることを考慮したものと認められる。

○相続開始の時において、建物を建替中であっても、旧建物の賃借人が引き

続いて新建物に入居することとなっており、立退料の支払がない場合等

あるいは新築中の建物について、権利金の授受が完了し賃貸借契約が成立して

いる場合には、新建物のうち当該賃借人に賃貸する部分に対応する部分の

宅地は、当該賃借人の支配権が及んでいるといえるから、貸家建付地として

評価するのが合理的であると認められる。

○これを本件宅地についてみると次のとおりである。

・A社賃貸部分を貸家建付地として評価することに請求人及び原処分庁の双方

に争いがなく、当審判所においても相当と認められる。

・本件相続の開始の時には、本件宅地上に被相続人は新建物を建築中であり、

旧建物に係る賃貸借契約はA社分を除き解除され、新建物の賃貸借契約は

A社を除き平成元年4月以降順次締結され、かつ、新建物に係る賃借人は、

A社以外に旧建物の賃借人であった者はいないと認められる。したがって、

本件建物はA社に賃貸する部分以外は貸付けの用に供されておらず、本件建物

が当初から主として賃貸の用に供する目的で建築されたものであっても、

本件宅地のうち賃貸予定部分は貸家建付地とは認められず、ほかに本件宅地の

うち賃貸予定部分の評価に当たり考慮すべき特段の事情も認められない。

・請求人は、本件宅地の評価を貸家建付地に準じた評価によって行うべき

であると主張するが、請求人が主張する評価方法は、本件宅地の貸付予定部分

を貸家建付地として評価した価額に、被相続人が旧賃借人に対して支払った

立退料等を加算して算定するという独自の計算に基づくものであり、当該部分

が貸家建付地でないことは前記ハの(ロ)のとおりであるから、その計算には

合理性が認められず、本件宅地の評価方法として採用できない。

結果として、納税者の主張は認められなかった訳ですが、本裁決から学ぶべき

ことは「賃貸建物が建替中であっても、貸家建付地評価が認められる場合が

ある」ということです。

居住用のアパート、マンションの場合は同様のケースは少ないでしょうが、

店舗等の場合は十分にあり得る話です。

是非、この裁決を覚えておいて頂ければと思います。

なお、前回のブログも合わせてお読みいただけると

より理解が深まります。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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