役員だけの人間ドックは認められない
※2016年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
以前配信しました「日当の否認指摘に反論する方法」
はビックリするくらいの反響がありました。
水平的公平性と垂直的公平性を満たさなければ
税務上は損金として認められない、という考え方です。
さて、税務調査において同じ考え方で否認指摘された
実例を挙げたいと思います。
【税務調査の実例】
・役員(2人・親族ではない)が受けた人間ドックの
費用を福利厚生費として損金計上していた
・人間ドックの費用は約7万円/人
・人間ドックの受診料は法人名義のクレジットカード
・福利厚生規定が存在し、その中には
「取締役は定期的に人間ドックを受診し、
その費用は会社が負担するものとする」と記載あり
・役員以外の社員は法定の健康診断のみ受診しており、
人間ドックは受診していない(規定には役員のみの
記載があり、従業員に関する規定はない)
・調査官は「全従業員が受診できない以上、
役員に対する経済的利益の供与となり給与課税」
として否認指摘をした
この事案において顧問税理士は
「社内規定通りにしているわけだから
認められるはず」として反論しましたが・・・
さて、どのように考えるでしょうか?
結論は、調査官の言い分が正しいです。
人間ドックの費用を会社の損金にするには、
まず全従業員が受診できることが条件になります。
特定の者だけが認められる権利・行為は、
その者に対する経済利益とする考え方です。
これが「水平的公平性」です。
上記の実例でいえば、全従業員が受診できる
規定であれば、損金として認められることになります。
(実際に受診しているかは別問題)
もちろん、受診者にある一定の条件を課すこと自体は
(公平性があれば)認められています。
例えば、「雇用期間が3年以上経過した従業員を
対象とする」「事業年度開始日において40歳以上
の従業員を対象とする」などです。
一方、垂直的公平性ですが、例えば
役員:5万円以内
従業員:3万円以内
など、役員と従業員に差があったとして、
その差が通常考え得る範囲内であれば認められます。
これは、出張において役員だけが
グリーン車・ビジネスクラスに乗れる
ということと、解釈上は何ら変わりません。
上記の調査実例でいうと、「規定にあるから大丈夫」
では、税務上は通らないということです。
(この点、社労士が規定を作っている場合、
税務上のリスクが加味されていないので注意です)
このあたりは勘違いしている税理士が多いので、
規定内容と現実を見直しておくべきでしょう。
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