役員に対する経済的利益の額の注意点
※2016年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「役員に対する経済的利益の額の注意点」ですが、
裁決ではなく、通達の趣旨説明を解説していきます。
逆養老保険に代表されるような保険料を給与として処理するケースが
あります。
その他、生命保険料に限らず、何らかの経済的利益が役員に対して、
供与されることがあります。
当然、このような場合は定期同額給与に該当する場合とそうでない場合が
あります。
では、年払いで生命保険料を支払い、それが給与に該当する場合、
どのような取扱いになるのでしょうか?
年払いの保険料は「役員賞与」となってしまうのでしょうか?
まずは、基本通達を2つご紹介します。
第2款 経済的な利益の供与
(債務の免除による利益その他の経済的な利益)
9−2−9 法第34条第4項《役員給与》及び法第36条《過大な使用人給与の
損金不算入》に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」
とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより
実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係のある使用人を
いう。以下9−2−10までにおいて同じ。)に対して給与を支給したと
同様の経済的効果をもたらすもの(明らかに株主等の地位に基づいて
取得したと認められるもの及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる
贈与と認められるものを除く。)をいう。
(1) 役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合における
その資産の価額に相当する金額
(2) 役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合における
その資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額
(3) 役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の
価額と買入価額との差額に相当する金額
(4) 役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに
該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権の額に
相当する金額
(5) 役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた
債務の額に相当する金額
(6) 役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償
又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と
実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額
(7) 役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で
貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息の額と
実際徴収した利息の額との差額に相当する金額
(8) 役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の
用役の提供をした場合における通常その用役の対価として収入すべき金額と
実際に収入した対価の額との差額に相当する金額
(9) 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で
支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが
明らかでないもの
(10) 役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に
相当する金額
(11) 役員等が社交団体等の会員となるため又は会員となっているために
要する当該社交団体の入会金、経常会費その他当該社交団体の運営の
ために要する費用で当該役員等の負担すべきものを法人が負担した場合に
おけるその負担した費用の額に相当する金額
(12) 法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を
締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合における
その負担した保険料の額に相当する金額
これを踏まえて、下記通達があります。
(継続的に供与される経済的利益の意義)
9−2−11 令第69条第1項第2号《定期同額給与の範囲等》に規定する
「継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が
毎月おおむね一定であるもの」とは、その役員が受ける経済的な利益の額が
毎月おおむね一定であるものをいうのであるから、例えば、次に掲げる
ものはこれに該当することに留意する。
(1) 9−2−9の(1)、(2)又は(8)に掲げる金額でその額が毎月おおむね
一定しているもの
(2) 9−2−9の(6)又は(7)に掲げる金額(その額が毎月著しく変動
するものを除く。)
(3) 9−2−9の(9)に掲げる金額で毎月定額により支給される
渡切交際費に係るもの
(4) 9−2−9の(10)に掲げる金額で毎月負担する住宅の光熱費、
家事使用人給料等(その額が毎月著しく変動するものを除く。)
(5) 9−2−9の(11)及び(12)に掲げる金額で経常的に負担するもの
これらを踏まえて、年払い保険料が給与になる場合に話を戻しますが、
結論からいうと、これは定期同額給与の範疇に入ります。
実際、本通達の趣旨説明には下記と書かれています。
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なお、定期同額給与に該当する経済的利益の供与に関連して、例えば、
法人が役員にグリーン車の定期券を支給している場合でその定期券が
6ヶ月定期であるときや、役員が負担すべき生命保険料を負担している
場合でその保険料を年払い契約により支払っているときについては、
これらの支出が毎月行われるものでないことから、その供与される
経済的利益の額は定期同額給与に該当しないのではないかとの疑義を
抱く向きもあるようである。
しかしながら、「その供与される利益の額が毎月おおむね一定」か
どうかは、法人が負担した費用の支出時期によるのではなく、その役員が
現に受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるかどうかにより判定する
こととなる。
したがって、上記のように、法人の負担した費用が、その購入形態や
支払形態により毎月支出するものでない場合であっても、当該役員が
供与を受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるときは、定期同額給与に
該当する。
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結果として、役員賞与にはならないのです。
しかし、実際の税務調査において「役員賞与である」と
間違って指摘された実例もあり、税理士としては注意が必要です。
この話は税理士対象の支部研修等でも解説したことが何度もありますが、
多くの方がメモを取られる内容です。
年払いの保険料が役員賞与となれば、金額も相当額になることが多いです。
しっかりと、この趣旨説明を覚えておいて頂ければと思います。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。