役員報酬の上げる否認リスク
※2015年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
私がセミナーで強調して伝えているのは、
「役員報酬を上げ下げするリスク」です。
銀行対策なのでしょうが、役員報酬を極端に下げてムリにでも
黒字を確保する。もちろん必要な行為なのでしょうが、
そこから生まれるリスクを考えてしているのでしょうか?
よくある失敗例ですが、役員報酬を下げた後に、
急な退職事由(突然の廃業宣言・経営者の体調不良・死亡など)
が生じた場合、かなり低い退職金しか支払えません。
リスクはこれだけではありません。
役員報酬をいくら下げても、税務署は何も言いません。
しかし、急に上げたら税務調査で指摘される可能性は高まります。
こういうと、「えっ!?下げた後に上げたんだから
適正な役員報酬でしょ?」と思う税理士が多いのですが、
そんなことはありません。
客観的に考えてみてください。
役員報酬を下げておいて、退職する前年から急激に上げて、
それを基に退職金の計算をし、支給したら・・・
普通に考えて、否認指摘されます。
これと同じで、退職金を支給していなくても、
役員報酬を急激に上げるのは否認(指摘)の対象です。
よく取り上げられる裁決に下記があります。
平成9年9月29日 公開裁決
http://www.kfs.go.jp/service/JP/54/16/index.html
あくまでも役員報酬は、法人税法上
①職務内容
②法人の収益状況
③他の使用人に対する支給状況
④類似法人との比較
の総合勘案なのですが、この裁決では1つの判断要素として、
【売上高・売上総利益の伸び率と比べて】
役員報酬の伸び率が合っていないことを指摘しています。
役員報酬を2倍にしようと思った場合、
法人の売上・粗利が2倍になる見込みがありますか?
普通に考えて、そういう状況はあまり無いかと思います。
それでも、役員報酬を2倍にして、税務調査で指摘され、
役員報酬を2倍にした根拠を調査官に説明できるのでしょうか。
常識的な絶対金額内であれば問題ないでしょう。
例えば、年間1,000万円以内の支給額で
役員報酬を増減させても調査官は何も言わないと思います。
しかし、ある程度高額になってくると、
調査官も過敏にならざるを得なくなります。
繰り返しになりますが、役員報酬は総合勘案で決まるのですが、
「法人の収益状況」も入っていますから、黒字ならまだしも、
役員報酬を上げておいて赤字だと、これまた
否認指摘されやすい状況になることは間違いありません。
「黒字か赤字化は結果論でしょ?」と思うかもしれませんが、
役員報酬はあくまでも今期の業績(予測)に対する
貢献(予測)への支給ですから、役員報酬を上げておいて
赤字だと、言い逃れは難しくなります。
こう考えると、役員報酬は一気に下げることができますが、
上げる場合は徐々に上げることしかできないのです。
ここまで考えて、役員報酬を決めている会計事務所は
少ないようですので、ぜひ注意してください。
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