役員報酬の適正額とは?
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「役員報酬の適正額とは?」ですが、
平成9年9月29日の裁決を取り上げます。
この事例は非常勤取締役ABC3名への役員報酬が否認された事例ですが、
前提条件は下記となっています。
○ パチンコホールを経営する同族会社
○ Aの役員報酬、( )書きは原処分庁が認定した適正額
・ 平成4年7月期 714万円(132万円)
・ 平成5年7月期 934万円(150万円)
・ 平成6年7月期 954万円(192万円)
○ Bの役員報酬、( )書きは原処分庁が認定した適正額
・ 平成4年7月期 326.4万円(132万円)
・ 平成5年7月期 656.4万円(150万円)
・ 平成6年7月期 686.4万円(192万円)
○ Cの役員報酬、( )書きは原処分庁が認定した適正額
・ 平成4年7月期 408万円(132万円)
・ 平成5年7月期 738万円(150万円)
・ 平成6年7月期 768万円(192万円)
結果は棄却となって請求人が負けたのですが、その主張の中で
従業員の中の給与額が多い4名を比較に出し、「不相当に高額でない」
と主張しています。
ちなみに、この4名の給与額は下記となっています。
○ Dの給与額
・平成4年7月期 約756万円
・平成5年7月期 約786万円
・平成6年7月期 約787万円
○ Eの給与額
・平成4年7月期 約649万円
・平成5年7月期 約719万円
・平成6年7月期 約723万円
○ Fの給与額
・平成4年7月期 約577万円
・平成5年7月期 約594万円
・平成6年7月期 約593万円
○ Gの給与額
・平成4年7月期 約522万円
・平成5年7月期 約537万円
・平成6年7月期 約541万円
また、国税不服審判所は原処分庁が選定した類似法人の非常勤取締役の
役員報酬の平均額を計算したところ、下記となりました。
○ 平成4年7月期 122万円
○ 平成5年7月期 116万円
○ 平成6年7月期 180万円
さらに、請求人の売上高、売上総利益、使用人給与の伸び率の関係(下記)
からも判断しています。
○売上高、売上総利益の伸び率
・ 平成4年7月期を100とする
・ 平成5年7月期 115.6、100.2
・ 平成6年7月期 107.2、109.4
○ 使用人1人当たりの平均給与支給額、使用人給与の最高額
・ 平成4年7月期を100とする
・ 平成5年7月期 104.9、104.0
・ 平成6年7月期 106.4、104.1
○ Aの役員報酬
・ 平成4年7月期を100とする
・ 平成5年7月期130.8
・ 平成6年7月期133.6
○ Bの役員報酬
・ 平成4年7月期を100とする
・ 平成5年7月期 201.1
・ 平成6年7月期 210.3
○ CBの役員報酬
・ 平成4年7月期を100とする
・ 平成5年7月期 180.9
・ 平成6年7月期 188.2
このようになることから、売上高、売上総利益、使用人給与と比較して、
相当高い伸び率であると認定しています。
ちなみに、平成25年4月26日のメルマガで書きましたが、
名古屋地裁(平成6年6月15日、控訴棄却、上告棄却、確定)では
売上約1億9千万円、代表取締役(当然、常勤)の役員報酬1,800万円、
所得金額約138万円の事例で、過大役員報酬と否認されています。
この事例でも売上、売上総利益、使用人給与の伸び率との比較が
ポイントにもなりました。
もっとも、1,800万円とはいえ、
○ 類似法人の代表取締役の役員報酬の平均額の約2.93倍
○ 類似法人の代表取締役の役員報酬の最高額の約2.14倍
という論点もありましたが。
いかがでしょうか?
役員報酬は役員退職金に比べて否認事例は少ないことも事実です。
また、会社に利益が出ていれば「もっと増やしたい」という要望を
受けることもあるでしょう。
もちろん、実質基準は上記のような総合勘案になる部分ではありますが、
一気にある程度の額を増額するなら、そのリスクの説明はしておくべきです。
そうしないと、もし否認された場合に「先生がいいと
言ったのに・・・」ということになってしまいます。
どんな場合でもそうですが、税務である以上は常にリスクはあります。
税務調査の現場ではOKでも国税不服審判所や裁判になったら厳しいと
いうものもあります。
だからこそ、多少でもリスクのあるものは事前にきちんと説明をした上で、
進めていくことが必要なのです。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※2013年10月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。