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2026.02.27

1327役員賞与と貸付金に明確な境界線はない(前編)

※2024年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税務調査の最盛期に入り質問・相談が急増していますが、
法人の税務調査で対応に困るケースとして、

・売上や雑収入などが個人口座に入金されていた
・法人の経費に私的支出が混在していた

など「役員賞与」(損金不算入+源泉課税)となるのか、
それを回避するために「貸付金」(+未収利息)と
主張できないのか、という論点があります。

原則的な考え方はシンプルで、法人から役員や従業員
に対して【経済的利益の供与】があれば、実質的に
給与所得に該当することから源泉課税するものです。

しかし、この考え方はシンプル過ぎて、
解釈が非常に曖昧であることもまた確かでしょう。

例えば、一般的によくある金銭のやり取りとして、
社長が生活費のために法人の預金から出金した場合、
「貸付金/現預金」(+未収利息)と処理するわけですが、
これが税務調査で「貸付金ではなく役員賞与ですね」
と否認されるわけではないでしょう。

常識的に考えると、社長が法人口座から出金した金銭は
「社長個人の支出のため」であることは明白ですが、
では法人口座からの出金が経済的利益の供与と
言えるかといえば(返済することを前提にすれば)
やはり貸付金としか言えないでしょう。この例では、

・法人からの「給与」(経済的利益)で個人的費消する
・法人からの「貸付金」で個人的費消する

には外形的に違いがないことから、税務署も
当たり前のように否認指摘をしないことになります。

一方で、上記のように「売上の一部が個人口座に入金」
「私的経費がある」などが税務調査で判明した場合、
調査官は「役員賞与です」と指摘するわけですが、
貸付金で処理することとの違い・論拠は不明瞭です。

まず、売上や雑収入など法人が受領・計上すべき金銭を
社長が受取っていた場合、

●現金や個人口座に金銭がそのまま残っていた場合=貸付金
(資金使途が不明である場合を含む)

●個人的に費消がされていた場合=役員賞与

と区分する最高裁判決があります。

最高裁昭和57年7月1日 Z127-5021

会社の簿外預金の払戻金の使途が不明である場合、
これを会社が代表者に賞与を支給したものと認定した
源泉徴収所得税の納税告知が違法であるとされた事例

※この最高裁判決前の東京高裁昭和56年6月19日
(Z117-4813)でも同じ結論が出ています

この判決における考え方は上述のとおり、
経済的利益の供与があったかどうかに着目しており、
使途が不明=国税が使途を立証できないのであれば
役員賞与にならないと判断したものです。

一方で、個人的費消の事実など判定基準とせず、
「役員らが管理する各預金口座に振り込まれ
任意に処分できる状態になったことからすれば、
役員らの各預金口座に振り込まれた時点で役員らに
帰属したといえる」として、売上の一部が
個人口座に入金されていた事実をもって
役員賞与としている公開裁決事例もあります。

「売上除外をして請求人の役員らの各預金口座に
振り込まれた金員は、請求人からの役員給与に該当し、
じ後に請求人に対し役員らの返還債務が発生した
場合であっても、当該金員につき役員らが現実に
取得している限り、当該各預金口座に振り込まれた
時点で役員らの給与に該当するとした事例」

(平成27年7月1日裁決)

https://www.kfs.go.jp/service/JP/100/07/index.html

本裁決事例においては、税務調査の最中に
臨時株主総会を開催し、個人口座への入金額を
法人からの貸付金として返済する旨を決議したうえで
貸付金として修正申告を提出しましたが、その後
更正によって役員給与と認定されました。

また、併せて売上除外として重加算税を賦課、
偽りその他不正の行為として7年遡及として
納税者側が全面的に負けています。

結局のところ・・・売上・雑収入の一部を個人が
受取っていたケースにおいて、判決・裁決ごとに
判断基準・結論が相違し、役員賞与と貸付金の区分に
明確な判定基準がないことは間違いないので、
税務調査で役員賞与と指摘されたとしても、
「貸付金で処理しますよ」「貸付金がダメだというなら
その考え方(賞与との違い)を説明してください」
と主張・反論することによって、(調査官によっては)
貸付金で通ることも多いと考えた方がいいでしょう。

今回は、法人に帰属する売上・雑収入の一部を
個人が受取っていた場合の役員賞与/貸付金の
違いについて判決・裁決事例から解説しましたが、
来週水曜の本メルマガでは法人の経費の中に
個人的支出があった場合の役員賞与/貸付金について
実務的な判定基準を解説することにします。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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