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2026.03.06

役員賞与と貸付金に明確な境界線はない(後編)

※2024年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガでは税務調査でよく論点となる
「役員賞与と貸付金」の区分について解説しましたが、

今回は法人の経費の中に個人的支出があった場合、

役員賞与ではなく貸付金と主張できるかを解説します。

さて、前回解説した「法人に帰属する売上・雑収入の
一部を個人が受取っていた」ケースと相違し、

個人的支出を法人で計上・負担していた場合、

その支出を貸付金とする判決・裁決事例は見当たりません
(少なくとも私が探した範囲内ですが)。

わかりやすい事例として大阪高裁令和3年4月15日判決
(Z271-13550)が挙げられます。

この裁判での事実関係は下記です。

・副社長(代表者の妻)が服飾品や宝飾品等など
個人的支出を交際費に計上していた

・「借用証書」を作成して貸付金と主張した

・貸付金が認められず役員賞与して源泉課税

※本裁判は最高裁の棄却で確定しています

また、明らかな個人的支出ではなく、経費性が
争われた事案でも同じです。青年会議所の会議に
出席するための旅費交通費を争った裁決事例では、
法人の経費性を否認されたうえで代表者に対する
役員賞与と判断されています。

「請求人の負担した代表者が青年会議所の会議等に
出席するための交通費、宿泊費及び日当は、
代表者に対する給与に該当するとした事例」
(平成27年7月28日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/100/06/index.html

一方で、本メルマガ先月18日に配信した
「社長1人飲み交際費が重加算税とされた事案」
でも解説しましたが、「この事案で興味深い点は、
社長の個人的支出である飲食代を、役員賞与
(社長に対する経済的利益の供与)ではなく
貸付金として計上する修正申告が認められており、
かつ裁判でもこの点が争われていない」のです。

このように裁判・不服申立て等「出るところに出れば」
役員賞与と判断される個人的支出も、
税務調査内では貸付金と許容される余地は大きいです。

実際に私が質問・相談を受けた調査事案においても、
税務調査の前に個人的支出を自己否認=貸付金で
処理した修正申告書を提出し、調査官からは
貸付金で認めれるとされた事案が下記です
(未収利息が役員給与になるかを争った調査事案)。

「私的経費を役員貸付金に振替えた場合の利息は役員給与か?」
https://kachiel.jp/?p=29024

本メルマガのタイトル通り「役員賞与と貸付金に
明確な境界線はない」わけですが、
前回のメルマガで取り上げたような
「売上・雑収入が個人口座に入金されていた場合」は
否認論点として売上計上漏れ・重加算税(売上除外)・
7年遡及など調査官も悪質な事案として
役員賞与を譲らない(貸付金にさせない)誘因が
強いように思います。

一方で、法人計上の経費の中に私的支出が
含まれていたケースでいうと、否認論点は
経費(損金)と仕入税額控除の否認であって、
売上除外ではないことから、調査官もそこまで
目くじらをたてず、役員賞与ではなく
貸付金という主張が通りやすいものと考えます。

上記のとおり「出るところに出れば」役員賞与と
認定される私的支出も、前回の繰り返しになりますが

【税務調査で役員賞与と指摘されたとしても、
「貸付金で処理しますよ」「貸付金がダメだというなら
その考え方(賞与との違い)を説明してください」
と主張・反論することによって貸付金で通ることも多い】

ので、ぜひ役員賞与に反論してみてください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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