役員退職金の適正額
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「役員退職金の適正額」です。
役員退職金を計算する場合、功績倍率をどう考えるのか?ということが
問題になることがあります。
そして、功績倍率により計算される場合、最終的には類似法人の「最高功績
倍率」または「平均功績倍率」により、税務上の適正額が決まります。
では、どういう場合に最高功績倍率が採用され、どういう場合に平均功績倍率
が採用されるのでしょうか?
その考え方が東京高裁(平成25年7月18日)で示されています。
この事例は死亡退職した代表取締役の退職金の計算につき、
納税者(原告、控訴人)は最高功績倍率(3.0)を採用すべきと主張し、
原処分庁(被告)は平均功績倍率(1.18)を採用すべきと主張しました。
結果は納税者の主張が認められなかったのですが、その中でいずれを
採用すべきかの判断基準が示されています(下記)。
○ 控訴人は、同業類似法人における役員退職給与の支給状況と比較する
ための方法として、平均功績倍率法、最高功績倍率法及び1年当たり
平均額法があるけれども、これらの間に一般的抽象的な優劣関係はなく、
いずれも合理的な算定方法であるから、その中でも納税者に有利な
最高功績倍率法によるべきであり、また、被控訴人が本件同業類似法人を
抽出するために用いた抽出基準は不合理であるから、本件TKCデータ
(見田村注:Y-BAST)を使用して抽出された本件TKCデータ
同業類似法人の最高功績倍率である3.0倍を基礎とし、さらに、
■■■には功労加算すべき特別の事情があるので、30%の功労加算を
すべきであり(中略)旨主張する。
○ しかしながら、最終月額報酬、勤続年数及び平均功績倍率を用いて
役員退職給与の適正額を算定する平均功績倍率法は、その同業類似法人
の抽出が合理的に行われる限り、法36条及び施行令72条の趣旨に
最も合致する合理的な方法であって、同業類似法人の抽出基準が
必ずしも十分ではない場合、あるいは、その抽出件数が僅少※であり、
かつ、当該法人と最高功績倍率を示す同業類似法人とが極めて類似
していると認められる場合など、平均功績倍率法によるのが不相当
である特段の事情がある場合に限って最高功績倍率法を適用すべき
ところ、本件では抽出基準が必ずしも十分ではないとはいえないし、
本件同業類似法人のうち最高功績倍率を示す法人と控訴人とが極めて
類似していると認めるに足りる事情があるとは認められないことから
すれば、最高功績倍率法を用いるべき場合に当たるとはいえない。
※ この事例で抽出された類似法人は3社のみでしたが・・・。
○ また、被控訴人が本件同業類似法人を抽出する際の抽出基準とした
抽出対象地域、基幹の事業、調査対象事業年度及び調査対象事業年度に
おける売上金額はいずれも合理的であり、■■■に功労加算すべき
特殊事情があるとは認められない。
結果として、原則的な考え方は平均功績倍率法であるということです。
もちろん、厳密な類似法人の選定は民間ではできないため、
ここをどう考えるのかという点はありますが・・・。
こういう場合にTKCのデータを参考に計算する場合もありますが、
これに頼りすぎることは上記裁判例からも危険と言えます。
また、別の事例ですが、平成22年4月6日の裁決では役員登記されて
いない期間を役員在任年数に含めるかどうかにつき争われた事例で、
TKCのデータが否認された事例(類似業種月額役員報酬の平均値を採用)
もあります。
いずれにせよ、こういう否認事例があることを覚えて頂くと共に、
最高功績倍率、平均功績倍率の考え方を覚えておいて頂ければと思います。
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※2013年11月の当時の記事であり、
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