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2020.09.04

従業員不正が重加算税になる・ならないの基準

※2019年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

春の税務調査における最盛期に入りました。
本メルマガから複数回に分けて、代表者以外が行った
不正や(隠れた)取引が【重加算税になるのか】、
詳しく解説をしていきたいと思います。

今回は従業員の「不正」についてです。
「不正」とは広い範囲ではありますが、
従業員が売上を抜いて自分の利得としていたり、
取引先から(裏で)リベートをもらっていた
ようなケースが該当すると考えてください。

代表者が、本来法人に入れるべき収入・金銭を
自分の利得としていた場合、法人の売上除外
+重加算税になるのは当然なのですが、
従業員不正はむしろ法人(代表者)が
被害者であり、かつ税務調査で初めて
知った場合に重加算税になるのかが論点です。

まず、国税の内部資料で、従業員不正で
重加算税になるかどうかを解説した資料が
ありますので、一部を転載します。

「課税処分に当たっての留意点」平成25年4月
(大阪国税局 法人課税課)

※本資料を直接見たい方は、TAINSで
「H250400課税処分留意点」
と検索してください。

本資料の179ページには下記とあります。

「従業員であっても、会社の主要な業務を任され、
長期にわたる不正や多額な不正など会社が
通常の注意をすれば容易に発見できる不正行為を
管理監督しなかったために、これを見過ごし、
結果としてこれを起因とする過少申告が生じた
場合には、会社の行為と同視することができる。」
(一部、省略)
「なお、管理監督責任の不履行については
事実関係を立証することが困難である場合が
多いので、不正行為者がどの範囲まで業務を任され、
当該業務がどのようにチェックされていたか等
について、特に次の(1)から(3)までについて
関係者に対する「質問応答記録書」を作成する
などして証拠化しておく必要がある。
(1)重要な事務を担当していたこと
(2)当該従業員に業務を任せきりにしていたこと
(3)法人が何らかの管理・監督を
   しないまま放置していたこと」

つまり、税務調査において従業員不正が発覚した
場合に重加算税と指摘されたら、上記(1)〜(3)に
該当しないことを主張することになります。

(1)の反対:一般社員で権限がないこと

(2)の反対:業務の指示・命令をしていたこと
(それに反して従業員が不正を行ったこと)

(3)の反対:法人が管理・監督していたこと

特に、(2)(3)に共通して重要な論点は、
【法人(代表者)が気付くことができたか】
が挙げられます。「実際に気付かなかった」
ではなく、あくまでも「気付くことができたか」
「努力していたが気付くことができなかった」
が重要ということです。

税務調査でよくある主張・反論として、
「従業員が勝手にやったことだ」というのが
あると思いますが、それでは
主張論拠として弱く、法人側として、
「従業員が不正をしないように努力していた」
が「従業員がそれを超えて不正した」
と主張することが必要になってきます。

なお、上記国税内資料でも挙げられている
裁決事例は下記になります。

「請求人の従業員の行った不正経理行為は、
請求人の行為と同一視されるとして、
重加算税の賦課決定処分を認容した事例」
http://www.kfs.go.jp/service/JP/69/03/index.html

この公開裁決では重加算税の判断基準を

1 従業員は請求人の経理事務を担う重要な地位にいたこと

2 不正経理行為は請求人の課税申告に直接反映していること

3 不正経理行為は長期に及び、現金出納帳などの
  確認をすれば容易に把握できたと認められる

4 法人はそれらの確認を行っていないこと

の4つを総合勘案としています。
ぜひ併せて内容を確認してください。

来週は、従業員が会社に内密で取引し、
金銭を得ていた場合について解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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