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2016.05.31

必要経費で注目すべき裁決

※2015年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

確定申告に備える時期なので、前回から引続き
(所得税の)必要経費について書いていきます。

公開裁決なので、ご存知の方も多いかと思いますが、
いわゆる「ライブチャット」で得た収入(雑所得)の
必要経費が争われた裁決があります。

「ライブチャットサービス業務を行う請求人が
主張する各費用のうち、少なくともパソコン等の
購入費及びインターネット接続料金については
必要経費に算入するのが相当であるとした事例」
(平成19年分~平成23年分の所得税の各決定処分
及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)
平26年5月22日裁決

http://www.kfs.go.jp/service/JP/95/06/index.html

納税者としては、「アクセスを増やすため、
本件業務に使用する衣服、水着、ソファー、カーテン等を
購入した費用及び美容費であり、全て本件業務の遂行上
必要なものであるから、必要経費」と主張していましたが、
結果としては、パソコンや通信費のみが必要経費として
認められる判断となっています。

さて、この裁決内容をよく読むと、
衣服、水着、ソファー、カーテン等だから
認められていないというわけではなく、
「そもそも商品を購入した事実を証する」
ものが無かったことで認められていないものがあります。

裏を返せば、何を・いつ・いくらで購入し、
それを何に使ったのかが明示できれば、
否認された項目も必要経費になった可能性が
あるというわけです。

必要経費で重要なのは、立証責任です。

「税務訴訟の法律実務 第2版」
(木山泰嗣弁護士著 弘文堂)194ページには
必要経費の立証責任についてこう書かれています。

「必要経費については、その存在及び金額について、
課税庁側が主張・立証責任を負うのが原則であるが、
一応の合理性がある立証がされた場合には、
実際に要した経費がそれを超えることや、
特別な経費の存在及び金額について納税者が
主張・立証責任を負うものと解するものが多い。」

これは、税務調査において調査官が、
「業務の遂行上必要ないですよね!」と
根拠をもって主張・否認指摘すれば、
納税者側としては「○○という理由で必要なんです。
実際に××として業務に使っていますから」
と主張・立証しなければ、必要経費として
認められない、というわけです。

上記公開裁決の中でも冒頭で、

「ある費用が必要経費に当たるといえるためには、
単に業務と関連があるというだけでなく、客観的にみて
その費用が業務と直接の関係を有し、かつ、
業務の遂行上必要なものに限られ、また、
業務の遂行上必要なものというためには、
その者の主観的な判断のみによるべきではなく、
通常必要なものとして客観的に認識できるもので
なければならないと解するのが相当である」

と述べられています。

個人(事業主)の場合は特に、経費性の主張を
したいにもかかわらず、証拠を残していない
ことが多くあります。

確定申告に必要経費として算入するのはいいですが、
顧問先・関与先には、「必要経費に入れるからには
証拠を残しておくよう」指導することが重要です。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

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