必要経費に直接性は不要
※2016年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
平成26年1月17日に最高裁判決が出された、
弁護士の必要経費を争った裁判。
これによって、個人事業主の必要経費について、
大きく税務判断が変わることになりました。
この裁判では、地裁で納税者が負けたものの、
高裁・最高裁で納税者側が勝訴、確定になりました。
この裁判で注目されたのは、必要経費の要件として
「事業との直接関係性」が必要かどうかという点です。
以前から税務調査において、必要経費は非常に狭く
捉えられていましたし、今でもその傾向は強くあります。
さて、まず必要経費の法律規定を確認しましょう。
所得税法第37条
(略)必要経費に算入すべき金額は、別段の定めが
あるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価
その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額
及びその年における販売費、一般管理費その他
これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。
所得税法第45条
居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、
その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の
金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
所得税法施行令第96条
法第45条第1項第1号に規定する政令で定める経費は、
次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、
事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要
であり、かつ、その必要である部分を明らかに
区分することができる場合における当該部分に相当する経費
法律を読むと、事業と直接関連性がない支出は
必要経費にはならない、と記載はされていないわけです。
※所得税法第37条で「直接に要した費用の額」とありますが、
別途販管費は「直接に要した」が要件ではないことに注意
以上から、文理解釈上は必要経費に事業との直接関係性は
不要としか読めないわけですが、以前までの
裁決・判決を見ると、直接の関連性が必要と
判断されていたことから、税務調査でも
その要件が当然のごとく取り扱われてきたわけです。
例えば、個人事業主の交際費にしても、
支出した相手から売上が計上されているのかを確認され、
売上と紐づいていないなら必要経費にならない、として
税務調査で否認指摘を受けることもあったわけです。
実際に上記弁護士裁判においても、地裁では
従前からの裁決・判決をなぞるように、
「事業との直接関係性が必要」と判断されました。
この判決(高裁判決・最高裁は上告不受理)の
影響は大きく、今後個人事業主の税務調査において
「事業との直接関係性が必要」として必要経費の
否認指摘を受けた場合は、この判決文を読ませ、
明確に反論することが可能になったわけです。
今後の税務調査対応は大きく変わりますので、
ぜひ参考にしてください。
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