必要経費の直接性とは何か?
さて、今回のテーマは「必要経費の直接性とは何か?」です。
私にこのような質問がありました。
(内容は簡略化しています)
「個人事業主の顧問先に税務調査が入りました。
新事業を起こすために海外出張をしており、
海外渡航費を必要経費に算入していたのですが、
調査官は売上が認識できた時点で必要経費になるため、
売上が認識できていない年分は必要経費ならない、
と否認指摘してきました。反論方法を教えてください。」
まず、必要経費の概念ですが、
(1)個別対応
①売上原価
②総収入金額を得るため直接に要した費用の額
(2)期間対応
その年の販売費、一般管理費その他業務上生じた費用の額
に整理することができます。
上記事案において、調査官の言い分は
(1)②と言っているように思いますが、
もちろん(2)であれば必要経費になります。
この点、必要経費になるかならないかは
「売上に結び付いていること」が条件ではありません。
調査官の言い分が正しいとすると、
人件費・家賃はどうなるの?という話になります。
問題なのは、(2)において
・「事業に直接の関連を有すること」
・「業務の遂行上通常必要な支出かどうか」
が論点になるのです。ややこしいので具体例です。
個人事業主である医師は下記の者にお歳暮を贈りました。
必要経費なるでしょうか?
・患者の紹介を通して付き合いのある開業医
・患者の転送先の大学病院・総合病院の医師
・自身の診療所で勤務する非常勤医師
・レントゲン技師・薬剤師
・顧問税理士
答えですが、すべて必要経費に「なります」。
当たり前のように思われるかもしれませんが、
実際この具体例は不服審判所で争われた事案です。
裏を返せば、調査で更正による否認を受けた事案です。
(平成22年2月18日裁決
TAINSコード F0-1-349)
本裁決内容を要約すると、下記になります。
・すべての支出が医療業務を円滑に
行うことを目的とするものである
・医療業務に直接の関連を有する
・医療業務の遂行上、通常必要な支出である
と判定されたのです。
似たような事案として平成19年3月22日裁決があります。
(非公開ですが不服審判所の検索システムで出ます)
「原処分庁は、交際費の一部について、事業との関連が
不明であることから、必要経費に算入されない旨主張するが、
当審判所において、請求人提出資料を基に検討したところ、
同交際費には、その費用発生の事実及び費用の額の正当性が
いずれもあると認められ、また、主たる売上先に対する
贈答であることから、事業との関連性及び
事業遂行上の必要性がいずれもあると認められるので、
同交際費は、必要経費に算入されるというべきである。」
つまり、必要経費の判定でいう「直接の関連」
とは、「事業関連性があること」を指すのです。
売上と結びついている必要性は問われていません。
この点、調査官はもちろん、税理士の中にも
認識が相違している人が多いと思いますので、
確定申告時期の判定には十分に気を付けてください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※2014年1月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。